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2008-07-01

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第81回-

Okada_top080701_2 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。本日が第81回となりました。

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
 2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団後、主としてファームで経験を積みながら迎えた3年目。ウエスタンリーグ開幕当初は好調なスタートを切ったものの、ここへ来て急失速。1軍定着へ向け、早期復調が待たれます。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でレポートいたします。今回はどんな内容でしょうか?

       

1・2軍親子ゲームで本人を直撃

Osaka_dome朝8時頃の大阪ドームの外観。澄み切った青い空の下、歩道には通勤者の人影もちらつく

 更新日の1日は朝から京セラドームへ向かった。
 この日は1軍と2軍の親子ゲームが行なわれることになっており、サーパスは阪神と10時45分から試合が組まれていたのだ。練習は8時前から始まっていて、僕が着いた8時半にはサーパスの打撃練習の真っ最中。柴田と組んでティーを打っていた岡田は間もなくゲージに入った。フリーバッティングを見るのは久しぶりで、復調の気配を少し感じたい、と目を凝らして見たが…。う~ん、微妙。これは本人に確認するしかない、とバッティング練習に続き、外野でのダッシュを終え一塁側ベンチへ戻ってきたところで岡田を捕まえ話を聞いた。

谷上 どん底は脱しつつある?
岡田 いや、全然です…。
谷上 どないなったんや?
岡田 どうなってるんですかねえ…。土日の遠征(名古屋)には行かずにこっちに残ってやってて、その感じは悪くなかったんですけど。
谷上 さっきのバッティングの感じは?
岡田 あんまりです。なんかバラバラで、捕えられる感じがしないっていうか…。
谷上 出足の好調から何がどうなってそうなるんかなあ。
岡田 ちょっと調子が落ちて、いろいろ考えてるうちに、どんどんおかしくなったっていったっていうか…。
谷上 今は状態を上げるためにどういうことを意識してる?
岡田 小川さんに言われたことを思い出して。1つは割る形です。この形さえちゃんとできたら7割はできたと同じって言われてたんで。もう1つは、そこから打ちに行く時に右肩が突っ込まないというか、肩は残してバットを出していくということです。
谷上 小川さんが1軍へいったことも大きい?
岡田 あるのはありますけど…。でも、もう自分がやっていかないといけないんで。
谷上 そらそうや。今日は出番あり?
岡田 わかんないです。(親子ゲームのため)上から手伝いにきてる人もいるんで…。
谷上 でも、気持ちを切らさんとやっていかんと。まだシーズンは半分あるから。
岡田 やるしかないですよね。
谷上 でも、正直、焦ってる?
岡田 やばいです。この3年の中で一番やばいです。

       

1軍首脳の前でアピールしたかったが…

Startingmamber080701この日のウエスタンリーグ公式戦のスタメン。岡田は6番ファーストで出場した

 前回の更新以降、サーパスの試合は6月28、29日の中日戦だけだった(29日は雨で中止)。しかし、岡田は不振から神戸に残り練習をしたので、この日は10日ぶりの試合はだったわけだ。
 スタメンが発表されると「6番ファースト」で出場。この日は1軍首脳陣も姿を見せており、復調気配を見せたいところだったが…。
 試合は阪神の先発がボーグルソン、オリックスは梶本達哉でスタートした。岡田の第1打席は2回裏、5番・古木克明のゲッツーで走者なしとなった場面で回ってきた。
 その初球。岡田は真ん中高めの140キロ台半ばのストレートをセンターへ弾き返した。しかし、ライナーで飛んでいった打球をセンター庄田隆弘が背走しキャッチ。岡田本来の2段階に加速しながら伸びるような迫力がなかった。
 ただ、初球から手が出たことも、当たり自体も悪くはない。希望を持って2打席目以降を待つことにした。
 その第2打席は2点を追う4回、2死満塁の場面で回ってきた。アピールには絶好の場面だったが、ここがいけなかった。
 初球、外のストレートを見逃し。2球目、外のストレートをファウル。簡単に追い込まれると最後は外の146キロのストレートに空振り。3球三振の結果に、ネット裏を中心に集まったオリックスファンからもため息が漏れた。
 ゲッツーで2死走者なしとなった直後に対した1打席目と、一打同点の場面で立った2打席目ではボーグルソンのボールも気持ちの入り方が違って見えた。まさに1軍のボールで、残念ながら現状の岡田ではついていけなかった。

       

Okada_game080701_2第2打席では2死満塁のチャンス。しかし、阪神先発・ボーグルソン1軍クラスの投球に3球三振。この試合の2打席を見る限り復調にはまだ時間がかかりそうだった

不調の原因は気持ちの問題か?

 快調なテンポで進んでいた試合は阪神が4回に2点、5回に3点と得点を重ね一気にペースダウン。この日は親子ゲームのため2時間半を超えて新しいイニングに入らないという決まりがあったが、それとは別に僕は時間が気になっていた。というのも実は、12時45分からドーム内の一室で水口栄二バッティングコーチに別件の取材をすることになっていて、試合途中で席を離れなければならなかったからだ。
 前半の快調な進行から3打席は確実に見れる、と踏んでいたが、得点が0対7となり、6回裏のサーパスの攻撃が始まるところで広報から携帯に連絡が入った。ここで僕の観戦は終了となり、今回の岡田観戦の2打席のみ。3打席目の結果は確認できなったが、その日の感じでは大きな期待は出来なかったように思えた。残念ながら…。
 試合途中、スタンドにいた編成部の藤井康雄氏に少し話を聞くと、岡田のバッティングについてこんな感想を口にしていた。
「テークバックで左肩が背中側に入ってるなあ。ああなると、打ちに行く時に反動で開きやすくなるんですよ。いろいろあるけど、その点がひとつ気になりました」
 一方、ある球団関係者からは、若手全体に言えることとして、こんな厳しい声も聞こえた。
「なかなか殻を破れない選手というのは技術より気持ちの方なんじゃないですか。3年、4年ファームにいるということは1軍から見れば補欠。高校や大学で3年も4年も補欠なら恥ずかしいと思うでしょう。でも、プロの世界にいることで安心してしまうようなところがあるんですよね。本人はもちろん一生懸命やってます、と言うけど、どこまで本気で1軍の9つのポジションを狙ってるのか。ひとつ思うのは、若手で私生活が充実してたらダメですよ。1軍に上がるまではすべての時間を野球に使うくらいでないと、本気でレギュラーを狙ってるヤツには勝てない」

       

思い出の地・舞洲で蘇るか

 結果が出ないと、当然、いろんな声が出てくる。それがプロの世界だ。岡田に関しても、日々、向けられる視線が厳しくなっているのは当然で、そこは誰より本人が感じているはず。その評価をどこで変えられるか…。何かきっかけがほしい。
 観戦した翌日の阪神戦は舞洲ベースボールスタジアムで行なわれることになっていた。舞洲と言えば、大阪の高校野球のメイン会場。岡田にとって履正社時代の思い出が詰まった場所だ。前にも書いたが3年夏の準決勝で、大阪桐蔭に敗れた一戦の最終回、バックスクリーンへ意地の一発(通算55号)を見せたのもの“ここ”だった。打った相手は1年生当時の中田翔だった…。
 試合前のベンチでの別れ際、『明日は思い出の球場やな」と言うと、岡田も表情を緩め「はい」。
 何かを思い出すきっかけになってくれれば・・・。

080701okada当人たちはもちろん日々一生懸命練習に励んでいるだろうが、その中でさらに抜出さなくてはならないのがプロの世界。岡田にも技術的、精神的なきっかけが求められる

 試練の毎日が続く。

      
 
■2008年ファーム成績(6月30日現在)
48試合 159打数34安打 2本塁打 14打点 24四死球 37三振 打率.214(打撃成績14位)

(取材・文/谷上史朗)

このシリーズは毎月1日、11日、21日頃に更新しています。次回更新は7月11日頃の予定です。 

2008-06-24

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第80回-

Okada_top080624 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。本日が80回目の更新です。

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
 2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団後、主としてファームで経験を積みながら迎えた3年目。ウエスタンリーグ開幕当初は好調なスタートを切ったものの、ここへ来て急失速。1軍定着へ向け、早期復調が待たれます。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でレポートいたします。今回はどんな内容でしょうか?

       

複雑な気持ちで更新する第80回

 このレポートもついに80回目を迎えた。しかし、これは決してメデタイことではない。レポートをスタートさせた時点では、「岡田が1軍に定着するまで」をひと区切りの目安にしていたからだ。
 1軍に定着すれば毎日の活躍は新聞やテレビのニュースで報じられるようになり、ここで伝えなければならない理由も少なくなる。そう思っていたのだが…。
 だから、80回目を迎えて書き続けていることにちょっと複雑な気分でもある。ただ、こうなれば、岡田が本物になるまでトコトン追いかけるつもりだ。

 さて、依然、岡田の不調は続いているようだ。「ようだ」というのは、過去2回に続いて今回も僕が観戦には向かえなかったのだ。
 手元のスケジュール帳には6月14、15日のソフトバンク戦(あじさい)も、17、18日の阪神戦(鳴尾浜)も、20日からの広島3連戦(あじさい、2試合目は雨で中止)も、しっかり書き込んでいたが、残念ながら時間が取れなかった。
 前回更新日以降の僕は、京セラドームから京都、熊取、梅田、加古川、鳥取、淡路島…と、近場をグルグル回っていた。
 その中で京セラドームには2度取材で訪ねた。どちらも試合前の取材が目的だったが15日の中日戦は残って試合も観戦。グラウンドの戦いを眺めながら、合間合間に浮かんできたのは岡田のことだった。

        

Kondo080624今季、1軍でローテーション入りした近藤一樹。昨年までは岡田と同様、ファームでの生活がほとんどだった

近藤一樹の成長

 その日、オリックスの先発は近藤一樹だった。すっかりローテーション投手となった近藤だが、岡田を追い始めた一昨年、そして去年はほとんどファームで投げていた。
 岡田観戦の中で最もよく見たサーパスの先発投手がこの近藤と今年から阪神に移った阿部健太。僕の中では完全にサーパスのイメージが定着してしまっていたが、近藤は今年一気にチャンスをつかんだ。
 この試合でも、中日先発の中田賢一を向こうに回し、5回までは速球でぐいぐい押す力投で無失点。6回につかまり4失点でマウンドを降りたが、投げっぷりには自信が漲っていた。
 昨年ファームで最多勝と最高勝率の二冠を取るなど「兆し」は見せていたが、いい意味で僕の知っている近藤とは、もはや別人である。
 近藤が背中を向けるたびに背番号の「65」がネット裏の席にいた僕の方へ向いた。この背番号に去年の秋を思い出した。
「この秋は55と65。この2人を一人前にせなアカン」
 そう言ったのは当時の住友平2軍監督(現・1軍ヘッド)。夏場から調子を上げていた岡田について話を聞いた時
「今の状態なら1軍にはいつでもどうぞって推薦してるんですよ」
と話したあとに先程の言葉が続いた。
 “強化指定選手”に近藤と岡田を指名した形だったが、今、1軍にいるのは近藤のみ…。
 中日戦の試合後、帰ろうとしていると、球場出口のところで私服に着替えた住友ヘッドの姿を見かけた。一瞬、岡田の話題を出そうかと思ったが、思い直し、挨拶だけしてその場を立ち去った。
 チームが負けた直後ということもあったが、何より今の岡田の状態を思えば「1軍ヘッドコーチ」に聞くべきことが思いつかなかった。

       

続々と上に昇格する「サーパスな選手たち」

Okada080624ファームにいた選手がぞくぞくと1軍に昇格をしていく中、岡田も早期復調が望まれる

 この日観戦した試合では、9番ショートで森山周もスタメン出場していた。守備でひとつ「?」というプレーはあったが、打ではヒットも放ち、1軍の中で「普通」にプレーしていた。
 また、その日は出番がなかったが、3回前のレポートで書いた一輝は、18日の巨人戦で今季第1号を放った。3日に1軍昇格を果たした由田慎太郎も出場機会にはなかなか恵まれないが1軍帯同を続けている。「サーパスな選手たち」の姿が目に入ってくるたび岡田を思ったが、果たしてオリックスのユニフォームを着て、当たり前のようにプレーする日はいつになるのだろうか。

 23日現在、ウエスタンリーグでの岡田の打率は.214まで下がった。
 打撃成績13位。これは規定打席到達者の中では最下位となる数字だ。
 選手にとっては、ファームで規定打席に達するということ自体、決して嬉しいものではない。しかも、数字が残っていないとなればなおのこと。リーグトップの48試合出場や186打席も岡田の置かれた状況を示している。

 21日、移動中にメールが届いた。
 岡田貴弘選手を応援する会のY氏からだった。あじさいスタジアムへ観戦に行っていたそうで、メールを開くととこう書いてあった。
『球場へ着いたら1打席目は終わってたんですけどヒットだったようです。また打ったら報告します』
 しかし、その後のメールが届くことはなく、その日は5打数1安打。前回の更新以降の成績も18打数2安打…。光はまだ見えてこない。

        

岡田に伝えたい下山真二のひと言

 とまあこんな感じで、書いている僕の気分もなかなか上がってこない状況なのだが、最後に1軍で活躍中の下山真二の話を少し書かせてもらう。
 実は2度の京セラドーム取材の目的は下山に話を聞くためのものだった。じっくり話を聞くのは初めてだったが、前向きでガッツ溢れるプレースタイルの裏に、数々の壁を乗り越えてきた苦労があったことを知った。
 プロ野球選手になることは子供の頃からの憧れだったが、プロ入りは27歳の誕生日を目前に控えた秋。「ダメならプロは諦めるつもりだった」という日本生命での5年目、覚悟のシーズンにラストチャンスをつかんだ。近鉄の8巡目指名だった。
 プロ入り後も1軍と2軍を何度となく往復しながら、常に前向きな姿勢だけは失わないように心がけてきたという。

Shimoyama080624アマチュア時代からの苦労を経て、現在1軍で活躍中の下山真二

 2年前、下山は1軍の出番に恵まれず、サーパスで姿を見かけることも少なくなかったが、ある時こんなことがあった。雨のため試合途中でコールドゲームになった試合終了後、下山だけがグラウンドに現れ、小雨の中、ティーバッティングを始めたのだ。
 他の選手や首脳陣はバスに乗って帰る支度をしていた時で、時間的にそれほど長いものではなかったが、1軍経験も豊富な下山のそんな姿は僕の中に強い印象を残した。
「やったもん勝ちですからね」
 今回の取材の中で下山から聞いたひと言を最後に岡田にも伝えたくなった。
 今の取り組みが必ずこの先につながると信じ、今はとにかく練習の虫となってほしい。

           

■2008年ファーム成績(6月23日現在)
48試合 159打数34安打 2本塁打 14打点 24四死球 37三振 打率.214(打撃成績13位)

(取材・文/谷上史朗)

このシリーズは毎月1日、11日、21日頃に更新しています。次回更新は7月1日頃の予定です。 

2008-06-11

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第79回-

Okada_top080611 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。本日が79回目の更新です。

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
 2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団後、主としてファームで経験を積みながら迎えた3年目。ウエスタンリーグ開幕当初は好調なスタートを切ったものの、ここへ来て急失速。1軍定着へ向け、早期復調が待たれます。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でレポートいたします。今回はどんな内容でしょうか?

        

長いトンネル…

 このブログ更新予定日の11日、名古屋ウエルネスとのプロ・アマ交流戦で岡田に一発が出た。実戦では3月28日広島戦以来の一発だ。アマチュアチーム相手の一発とは言え、何とか浮上のきっかけにしてほしい。

 とは言え、まだまだ深刻な状況が続いている。
 公式戦では5月28日以来ヒットが出ておらず、打率は.227にまで落ち込んだ。
 前回の更新以降、サーパスの試合は1度地元開催に戻ったため、このブログで紹介したデータを寄りどころに岡田の復調を期待したが、中日3連戦のうち2つが雨で流れ、4日に行なわれた試合では4打数ノーヒット。犠飛が1本あったが2三振を喫した。
 そして、6日からは相性の悪い由宇の広島戦となり、その初戦が5の0。ここで、4番での起用を続けていた首脳陣もついに断を下し、7日は今季初のスタメン落ち。試合終盤で守りに着いたのみで、8日も代打の出場で三振…。
 本人も相当滅入っているだろうが、ここで腐ったり、逃げたり、ごまかしたりしたら今シーズンは終わってしまう。今はとにかく、前を向いて、やるべきことをやるしかない。こういった状態が悪いときの過ごし方が後半戦の結果を分けると信じて、気持ちを切らすな、岡田!

       

Ochiai080611 中日ドラゴンズ、落合博満監督。現役時代は独自の打撃理論で3度の三冠王を獲得

落合流に学ぶ 

 気持ちの一方で、やはり技術的につかみきれていない岡田にはそこを求めてほしい。75回目のレポートで股間節の話を書いたりもしたが、今回、ネタを探しながら目に止まったのは「軸足」。
 なかなか観戦に向かえない中で頭の中で岡田のバッティングを巡らせていると、中日・落合博満監督著の「超野球学①」(ベースボール・マガジン社)のことを思い出した。その中で落合監督が「打撃の基本」として書いているのが軸足の話だった。僕が初めて読んだのは4、5年前になるが、軽い衝撃を受けたことを覚えている。案外というか、バッティングを考える中で軸足にはあまり注目をしていなかったからだ。
 一部抜粋するとこんな感じだ。

「私が現役時代からバッティングにおいて技術的にどこかが崩れた場合、その原因はすべて軸足の使い方が悪くなっているからだと分析していた。私の現役当時から現在まで、周囲が期待する成績に届かず苦労している選手というのは、99%が軸足に問題を抱えている。軸足の使い方が悪いと、あるいは悪くなると、下半身の使い方も崩れ、結果として上半身の動きも崩れていく。だから、グリップの位置やタイミングのとり方を修正しても、応急処置にしからないのだ。バッティングにおいて最も大切であり、それなのにあまり注目されないのが軸足の使い方なのだ」

       

軸足に注目

Okada_batting080611_2 岡田選手の連続写真。体の中心線の移動距離に注目して欲しい

 本の中では、このあと図を入れながら解説が進んでいくのだが、最も大事なことは「構えの時点からスイングまで中心線が動いてはいけない」ということ。構えた時の体中央に線を引き、その中心線の位置がステップから、スイングするまで投手寄りに動いてはいけないということだ。
 中心線を動かさないためには、「構えた時の位置から軸足を動かさず、我慢しておくこと」。さらに「回転は軸足や投手寄りの足ではなく、あくまで体の中心線で行なう。体の中心を軸にしなければ、自然ないい回転はできない。これお打撃の基本と考えたい」とある。
 打ちにいく中で体が投手寄りに移動する、いわゆる「スウェーする」状態になると、体と一緒に腕も出てしまい100%の力でボールを叩くことができない。パワーのロスが起きる。ボールに近づくことで詰まりやすくなるなどのマイナス点が生まれるという。
 そこで大切なのが軸足だと落合監督は記している。

「大切なのは常に軸足を意識し、足場をしっかり慣らし、両足を安定させて立つこと。また、両足とも親指のつけ根の内側で地面に接して立つ感覚を持つこと。ベタ足やつま先立ちでも、踵に重心を置いた立ち方でもない。親指の付け根の内側にタコができるのが、いい打者の条件なのである」

 このあたりのイメージを持ちやすくするため、過去の岡田のバッティング写真を掲載しておく。現実にはどの選手もまったく中心線が動かないということはないが、大きく前に動くのはよくない。右の写真では右側の方が中心線の移動が小さい(頭を基準に見ればよくわかる)。ちなみに、このときはフリーバッティングで柵超えを連発していた時のもの。非常に気持ちよくスイングしていたことを覚えている。

        

空いた時間をどう使うか

 僕は普段の仕事で高校生や大学生のドラフト候補の選手を取材することがある。
 その時、ピッチャーからは「(プロの)○○投手の連続写真を見て勉強しています」とか「テレビで見て参考にしています」と聞くことがある。
 ところが、不思議とバッターからこの手の話を聞くことは少ない。「バッティングは感覚」という思いが強いからなのか、肉眼ではわかりにくいからなのか…。せいぜい参考にするとしても、構えやタイミングの取り方までで、細部まで観察する選手は少ないのではないか。これはプロの若手選手にも言えることだろう。
 しかし、単純な話として、打つ人(打ってきた人)には、やはり技術的な裏づけがある。なら、これだけ情報が出ている時代、雑誌でも本でもビデオでも、学ぶことはできる。活用しない手はないと思うのだが…。そんなことをよく思う。
 落合監督の本にしても、かなり本人の言葉で書かれた打撃論で、アマチュアの指導者やプロのコーチなどで参考にしている人は少なくないはず。しかし、選手は案外目を通していない。
 グラウンドでの練習はみんなやっている。あとはユニフォームを脱いだあとの時間をどれだけ野球のために使うか。情報を集め、頭を鍛えることも努力のひとつで、これも先々の結果を決める大きな要素になるだろう。
 例えば、中村紀洋選手は、落合監督を師事していたこともあり、「超野球学」を早々に読んでいた。これは以前、本人から直接聞いている。
 また、前にも書いたが、ナイターが終わって家に戻ると毎晩、録画しておいたCS放送を必ず見返し、自分の打席のチェックをしていた。飲んで帰った日も、必ず見ていたという。
 結局、やったもの勝ちと言うのはどの世界でも同じことなのだ。そして成功者に学ぶというのも、どの世界にも共通する話である。

 話はかなり広がったが、とにかく岡田に浮上のキッカケを掴んでほしい、と思い長々書いてしまった。
 次回の更新までにはどこかで観戦に向かう予定。そこでいい形を見ることができればいいが…。

     
 
■2008年ファーム成績(6月11日現在)
43試合 141打数32安打 2本塁打 14打点 24四死球 35三振 打率.227(打撃成績13位)

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは毎月1日、11日、21日頃に更新しています。次回更新は6月21日の予定です。 

2008-06-02

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第78回-

080602okada_top_2  2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。本日で78回目を迎えました。

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
 2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団。2年目の昨年は、シーズン前半こそ不調だったものの、北京で開かれたオリンピックプレ大会での活躍を契機に後半復調しました。
 そして、期待がかかった3年目。開幕は2軍スタートとなったものの、ウェスタンリーグでは出だしから好調。しかし、コリンズ体制から大石体制に新たにチェンジとなり、今度どうなっていくのでしょう?
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でレポートいたします。今回はどんな内容でしょうか?

       

新体制スタートも…

Oishi080602_3就任後、新しい色を出し始めている大石大二郎監督代行

 先日、「岡田貴弘選手を応援する会」のある人から連絡をもらった。
「何か新しい情報はありますか?」
 誰もが気になるところで僕も気になる。新体制になって岡田はどうなるのか? 1軍昇格は? 起用は? 出番は? …、ということだ。
 しかし、残念ながらとっておきの新情報はない。夏を前にしたこの時期は高校野球の取材が集中し、今回は岡田観戦に向かうこともできなかった。
 ただ、1軍の話からすれば、やはり大石大二郎ヘッドコーチが監督代行となり1、2軍の入れ替えは活発になった。もちろん、大石代行自身の考えもあるが、前にも書いた通り、新監督というのは前任者とは違うカラーを出してくるもの。就任早々から、先発投手の球数制限の撤廃や、試合のない日の練習についても実施を決めた。また、27日には早速2軍視察などを行うなど脱コリンズ色を明確に打ち出している。

      

080602okada_01_2開幕から好調だった岡田の打撃もここへ来て急降下。なんともタイミングが悪い

痛い、勝負どころでの不振

 1、2軍の入れ替えでは、投手陣は別にして、野手陣では次のような形で行なわれている。25日に森山周、28日に相川良太、1日には前田大輔、由田慎太郎が昇格。(相川は1日に降格)。活発なことはいいことだが、その中で、岡田に声がかからないのが何とも寂しい。バッターとしてのタイプ、ポジションとの兼ね合いもあるので必ずしも成績とも一致しないが、今上がれないのはそういうことより、岡田自身の問題のようだ。
 前回の更新以降のバッティング成績を見ればそれがはっきりと見える。

 ・5月23日 対広島 (由宇) 3打数0安打
 ・5月25日 対広島 (由宇) 3打数1安打 1犠飛 1打点
 ・5月27日 対中日(ナゴヤ) 3打数0安打 1四球
 ・5月28日 対中日(ナゴヤ) 1打数1安打 3四死球
 ・5月30日 対ソフトバンク(雁ノ巣) 3打数0安打 2三振 2四球
 ・5月31日 対ソフトバンク(ヤフードーム) 4打数0安打
 ・6月1日 対ソフトバンク(雁ノ巣) 5打数0安打 1三振

 トータルで22打数2安打。四死球が6つあるはとはいえ、はっきり状態はよくないのだろう。前回の更新時は1本ずつながら6試合連続ヒット中だった。
 それに比べ今回は、不調の波にどっぷりハマってしまったかのようだ。古木克明がサーパスに落ち、濱中治も一向に状態が上がらない現状を思えば、岡田の調子さえ上向けばすぐにでも入れ替われると思うのだが…。もどかしい。

     

驚きの数字を発見!

Ogawa080602_3小川博文育成担当は1軍の内野守備走塁コーチに昇格。このあたりも影響しているのだろうか?

 コリンズ監督の辞任を受け、サーパスからは住友平2軍監督がヘッドコーチ、小川博文育成担当が内野守備走塁コーチとして、それぞれ1軍に昇格した。岡田について言えば、バッティングをずっと見ていた小川コーチの移動も今の不振に多少なりとも影響しているのかもしれない。
 この話とも関係するが、もう1つ、今回の不振に思い当たることがある。それは今回行なわれた7試合がすべて遠征でのものだったということだ。
 どういうことかと言えば、これは前々から感じていたことだが、岡田は遠征での成績があまりよくないのだ。
 そこで今回調べてみた。まず、北神戸、京セラドーム、鳴尾浜、甲子園、丹波で行なわれた近畿圏の試合での成績は81打数26安打で打率.321。ここまでのホームラン2本も北神戸で打っている。
 対してナゴヤ、由宇、雁ノ巣、ヤフー、高知で行なわれた遠征試合の数字を見ると、これがなんと51打数5安打。打率にすると.098。確かに、去年までの公式戦においても遠征ではあまり打っているイメージがなかったが、これほど極端な数字とは、調べてみて改めて驚いた。

※NPBの公式サイトにあるウエスタンリーグ打撃成績の岡田の成績は131打数32安打(6/1現在)。しかし、同じく球団の公式サイト上にあるファームの試合結果から1試合ごとに集計すると132打数31安打。何度やっても+1打席、-1安打の差が出てしまった。今回は後者の数字をもとに集計した点をご了承頂きたい。

      

遠征での不振の原因は?

 球場によっての相性はどの選手にも多かれ少なかれあるが、ここまで数字が分かれるとなると、そこに何があるのか、と考えてしまう。今度、本人にも聞いてみたいが、グラウンド上の問題なのか、それとも試合に入るまでのサイクルや前日の過ごし方の問題なのか、はたまたコンディションや気分の問題なのか…。

080602okada_03_2古木克明選手がファーム落ちし、似たタイプの選手は1軍にいなくなった。岡田にチャンスは到来するだろうか?

 可能性としてひとつ思い当たることがある。それは、やはり小川コーチのことだ。なぜかというと、サーパスでの小川コーチの肩書きは育成担当だったため、遠征時には居残り組の指導にまわり、チームに帯同していなかったのだ。これまで岡田に話を聞く中で、遠征から戻ってきた時に「試合前に小川さんにも見てもらったんで少し良くなりました」といった言葉を聞いたことがある。このあたりも遠征での不振に関係しているのかもしれない。
 ただ、この仮説が当たっているとすれば、岡田自身がまだ自分の中で技術的な裏づけを持てていない、ということでもある。もう、「これ」をいうものを持たないといけない3年目。小川コーチの異動をプラスに変えて、一本立ちのきっかけにしてほしい。
 …と書いたが、これはあくまで僕の推測。遠征での不振には別の理由があるのかもしれない。しかし、それならそれで、岡田にはこの原因を思いつく限り考え、可能性を1つ1つ潰していってほしい。
 これだけ極端な数字が出たとなれば、ここを上げていかないことには1軍も近づいてこないのだから。

      

■2008年ファーム成績(6月1日現在)
39試合 131打数32安打 2本塁打 13打点 24四死球 32三振 打率.244(打撃成績12位)

        

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは毎月1日、11日、21日頃に更新しています。次回更新は6月11日の予定です。

2008-05-21

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第77回-

080521_okadatop 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。本日で77回目です。縁起のいい数字ですね。

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
 2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団。2年目の昨年は、シーズン前半こそ不調だったものの、北京で開かれたオリンピックプレ大会での活躍を契機に後半復調しました。
 そして、期待がかかった3年目。開幕は2軍スタートとなったものの、ウェスタンリーグでは出だしから好調。明らかに風の向きが変わり始めています。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でレポートいたします。今回はどんな内容になっているでしょうか?

      

コリンズ監督、電撃辞任

 5月21日の夜、遅い取材が終わりタクシーに乗っていると、ラジオからのニュースに驚いた。
「プロ野球オリックスバファローズのテリー・コリンズ監督が辞任することが21日、オリックス球団から発表されました。コリンズ監督は…」

Collins5月21日の阪神戦を最後に辞任することを発表したコリンズ監督

 後半部分は電波状態が悪くなりよく聞こえなかったが、とにかくコリンズ監督が辞めるというのだ。その瞬間、僕の頭には、「なぜ?」「何があった?」「この時期になぜ?」と「?」「?」「?」がグルグルと回った。辞任というからにはコリンズ監督からの申し出なのだろう。しかし、よくある体裁を繕っての「辞任発表」ではないのか、と思ったり、辞任せざる得ない状況に持っていったのかも…、とか。あるいは、何かのきっかけでコリンズが爆発しての突発的な辞任では…と、想像は膨らんだ。

 しかし、とにもかくにもコリンズ監督が辞める。
 辞任の背景に頭を巡らせたあとに浮かんだのはやはり岡田のことだ。この一件で岡田はどうなるのか。原稿を書き始めた段階ではスポーツニュースも見ていないので「その後」の状況がわかっていないが、どうやら当面は大石大二郎ヘッドコーチが監督代行という形をとるようだ。
 大石ヘッドは岡田のプロ1年目にサーパスの監督を務めていた人で、ルーキー岡田を先発で起用し続けた“実績”もある。ただ、その後の岡田を大石ヘッドがどう見ていたかはわからない。それでも、昨年に続き今年もここまで1軍出場がなかった岡田にとって、今回の監督交代が状況を今より悪くさせることはないだろう。同じく今回の一件に目を輝かせている若手は多いだろう。次はそこからどう抜け出すかだ。
 ひとまず、コリンズ監督辞任に関する話はここまで。ここからは、元々頭から書く予定だった原稿をお届けしたい。

      

一輝が1軍で見せた姿を岡田はどう見たか

Ikki20日に行われた1軍の阪神戦で逆転タイムリーを放ち、お立ち台に立った一輝(写真はサーパスでプレー中のもの)

〈この表情はファームでは出ない…〉と、思った。
 5月20日、サーパスは高知ファイテンドッグスと交流戦を行なうことになっていた。
 当初、この試合を観戦する予定にしていたのだが、前日の夜に別件取材が決まり、観戦を断念。その取材を終えて夜、家に戻ってつけたテレビで、今年5年目を迎えた一輝の渾身の表情を見た。
 1軍が交流戦をスタートした初戦の阪神戦。試合は8回表に入るところだったが、そこで試合を振り返ってのVTRが流れ、一輝の活躍を知った。2-3と追い上げて、なお2死満塁のチャンス。ここで6番サードで今季初先発の一輝がウイリアムスからセンター前へ逆転タイムリーを放ったのだ。
 決して会心の当たりではなかった。しかし、ピッチャーの足元から二遊間のちょうど真ん中を抜けていった打球に一輝のこれまでの4年間を思った。
 〈抜けろ!〉画面からも伝わる必死の形相で一塁へ駆け出し、打球が抜けたことを確認すると「ヨッシャー!」の雄たけびと共にガッツポーズ。VTRを見ながら僕もジワッときた。
 入団以来、ファームで一輝と多くの時間を共に過ごしてきた岡田は、この活躍をどこで見たのだろう。そして、どう見たのだろう。1軍でのスタメン出場、お立ち台でのヒーローインタビュー、そしてあの表情を…。

       

平田良介(中日)の1軍起用にみる落合監督の期待

 もう1人、一輝の直後に1軍昇格を果たした選手にも、岡田のことが重なってきた。中日の平田良介だ。一輝から遅れること3日、16日にこの昇格を聞いた時、僕は驚いた。そしてまた、「やっぱり落合監督は違う」と思った。

Hirata昨年の日本シリーズなどで活躍した平田良介。今年は出遅れたが、ようやく1軍に昇格してきた

 平田はここまでウエスタンリーグで打率.181、規定打席到達者としては最低の打撃成績となる23位だった。それが1軍昇格で、即「7番センター」でスタメン出場なのだから、それは驚くというものだ。
 チーム事情はそれぞれにある。平田には昨年ポストシーズンでの活躍という実績もある。肩もかなり復調し、守れる強みがある。中日の投手陣を考えれば確かにこれは大きいだろう。一方で平田より成績を残しながら1軍に上がれない若手もいるわけで、そのあたりはどうなのか、という考えもあるだろう。
 ただ、落合監督の起用にひとつ思うのは、ファームでの実績と1軍での働きはイコールではないという点だ。また、〈プロに入って来たヤツはそれなりの力はみんな持ってる。力を出せる環境を作って起用するのが俺の仕事〉といわんばかりの面も感じる。
 そしてもうひとつ。落合監督は平田に対して、相当の期待を持っているということだ。〈こいつを一人前にしたい〉〈このチャンスをモノにして上がって来い!〉という思いを感じる。

 対して、これまでの岡田にはそういう期待を強く感じる場面がなかった。
 今季も出足から好調で、一時の高打率からは落ちたものの現在2割7分台をキープ。他のチームの若手の状況を見ていれば、1軍でチャンスをもらってもまったく不思議はない位置にいるのだ。ましてや、オリックスはリーグ最低打率は脱したとはいえ、名ばかりの実力者が揃う打線が一向に火を噴かないままなのだから。ローズはともかく、カブレラ、濱中あたりの使い方は考える時期にきているだろう。
 このあたりが新首脳陣となってどうなるか。是非、大石監督代行にはチームを作り直してほしい。まだまだ勝負にはこだわりつつも、一方では来年を見据え、若手をどんどん使ってほしい。

       

#54の次は#55だ!

 そして、当の岡田本人はというと、前回更新以降の成績は下記の通り。

13日 対阪神(鳴尾浜)5打数1安打 1三振
14日 対阪神(鳴尾浜)3打数1安打 1三振
15日 対阪神(鳴尾浜)3打数1安打 1三振 1四球
16日 対ソフトバンク(北神戸)3打数1安打 2三振
17日 対ソフトバンク(北神戸)3打数1安打 1三振 1四球 
18日 対ソフトバンク(丹波)2打数1安打 1四球
20日 対高知ファイティングドッグス 出場なし

Oishidaijiro監督代行の任に着いた大石大二郎氏。2軍監督時代は岡田をファームで辛抱強く起用し続けた

 13、14日は5番、15日は3番で16日からは7番。爆発といった数字ではないが、しぶとくヒット1本、四球1つを選んでいる印象だ。ここまでの17四球は桜井広大(阪神)と並びリーグトップ。出塁率の.375も新井良太(中日)に次ぐ2位。
 また、18日の1安打は前回の対戦で抑えられた新垣渚から放ったレフト前ヒット。一報をメールで知らせてくれた「岡田貴弘選手を応援する会」のYさんに、僕は「これも成長!」と書いて返信したが、地味ではあっても小さなこと1つ1つに成長を感じる場面が多くなった。
 打率もグッと落ち込んだ前回更新時より持ち直した。しっかり力を蓄え、さあ、仕切り直しだ。
 54(一輝の背番号)の次は55、今度こその爆発に期待したい。

       

■2008年ファーム成績(5月21日現在)
32試合 109打数30安打 2本塁打 12打点 15四死球 27三振 打率.275(打撃成績6位)

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは毎月1日、11日、21日頃に更新しています。次回更新は6月2日の予定です。

2008-05-12

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第76回-

080512okada_top 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。本日で76回目を迎えております。

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
 2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団。2年目の昨年は、シーズン前半こそ不調だったものの、北京で開かれたオリンピックプレ大会での活躍を契機に後半復調しました。
 そして、期待がかかった3年目。開幕は2軍スタートとなったものの、ウェスタンリーグでは出だしから好調。明らかに風の向きが変わり始めています。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でレポートいたします。今回はどんな内容になっているでしょうか?

         

成長の跡

 「最近の岡田はどうですか?」と、尋ねてきたのは履正社高校の岡田監督。
 開催中の高校野球春季大阪大会でベスト4に勝ち上がった11日の試合直後に顔を合わせると、こう逆取材された。
 そこで岡田の近況について、簡単に書けば「悪くないし、確実に成長はしています。あとは試合でどう結果を出すか」と返しておいた。

 ひいき目かも、地味なものかもしれないが、「確実な成長」を感じたのは5月7日に京セラドームで行なわれた広島戦。この日はナイターで1軍のオリックス対ロッテ戦が行なわれるため、その前、朝の10時45分開始の親子ゲームだった。
 通常12時半からの試合開始なら10時過ぎからサーパスのバッティング練習が始まるが、この日はすべてが繰上げの短縮バージョン。8時半にグラウンドへ着くとすでにサーパスのバッティング中で、ちょうど岡田が打っていた。
 じっくりは見られなかったが、フリーバッティングでの感じは悪くはない。
 全体のバッティングが終わると、岡田にはベンチ前でケーブルテレビのインタビューが待っていた。

「さあ、今日は我らが期待のナニワのゴジラ、岡田選手に登場してもらいます!」

 ハイテンションな女性レポーターの前でやや押され気味の岡田。
 その様子を僕と一緒に見ていた1軍の佐藤広報は「いろいろイベントにも引っ張り出してトークも鍛えていかないとねえ」と笑っていた。そんな機会を増やすためにも1軍だ!
 インタビューが終わり、ベンチへ戻ってきたところで軽く声をかけた。
 「絶不調は脱した?」と聞くと、ニヤッとしたあと「まあ、そんな悪くはないんですけど」。「この間の関西メディカル戦のあとの特打ちは凄かったけどなあ」と続けると、「あの時は自分でもよかったです。でも、何が良かったんかは…」。
 このところ話を聞くと、だいたいこういう感じになるのだが、打ってみないとその日の状態がわからない。何がどうなるといいのか、何がどうなると悪いのか、がまだ掴めていないのだ。
 もちろん、自分でのその点は自覚していて「なかなかいい時が定着しないんですよね」。

         

080512score「4番岡田、5番清原」と並んだこの日のサーパスのオーダー

4番岡田、5番清原

 この日のサーパスのスタメンには3日に復帰した清原も登場した。
「4番岡田、5番清原」の並びには、やはり特別なものを感じたが、岡田にそのあたりの感想を求めると、しばらくあってこう返って来た。

「切れないですよね」

 瞬時に意味が理解できず、ちょっと考えた。そして、清原自身のことを指しているのかと思った。故障続きの中でも気持ちを切らさずにやっていると…。
 しかし、そうではなかった。真意は「イニングの最後とかで僕で攻撃が終われないってことです」。
 な~るほど。確かに、ここ数日はスタンドもマスコミも注目は清原一色。2死で岡田に打席が回ってこようものなら、それも最終回にでも回ってこようものなら、〈自分では終われない〉ということだったのだ。
 「それはいろいろ気を遣います」と言った言葉に、岡田らしいなあ、と思いながら、それもひとつの経験。プレッシャーや刺激がある中でプレーできることは、恵まれているのだ。
 最後に「今日はコリンズも来るんやんな?」と聞くと「だと思います」。「一発いきたいな」の誘いに「はい」と表情を引き締めベンチ裏へ消えていった。

        

四球の急増

 さて、そんな中で試合は始まった。
 広島先発は今井啓介。結果を先に言うとこの日の岡田は2打数1安打、1四球。
 まず第1打席は2死二塁で回ってきたが、フォアボールで歩いた。
 次がまだ万全の状態には程遠い清原ということもあったのか、勝負にはきていたが結果はストレートのフォアボール。2席目は2死一、三塁のチャンスにセカンドゴロ。初球、真ん中近辺の真っすぐに見えた球でタイミングも合っていた。が、ちょっと力が入ったのか。もったいない当たりだった。
 3打席目は再びフォアボール。広島先発の今井啓介は明らかに岡田には投げにくそうだった。今井は岡田と同じ高卒3年目。やはり同期の中で「岡田貴弘」の名は特別な響きがあるのだろうと思う一方、この2つで今季14個目となったフォアボールの数に岡田の成長を感じた。

080512okada_batting_2岡田の成長の跡は、四球の数にも見られる。昨年までのもろさが減り、相手に与えるプレッシャーも増した

 1年目は82試合、319打席で17個(18.76打席で1個)、2年目は68試合、256打席で14個(18.28打席で1個)。それが今シーズンはこの試合が終わった時点で25試合、103打席で14個。7.36打席に1個の割合で選んでいることになる。
 この“急増”の裏には、まずバッティング技術の向上があるはずだ。追い込まれたあとのストライクからボールになる変化球を見極められるようになり、簡単にバットも空を切らなくなった。打席の中でもこれまでより余裕が生まれ、ボールもよく見えるようになっているはずだ(加えてレーシック手術の効果も!?)。
 そうなると、この日のように相手投手も〈簡単にストライクを取りにいくと持っていかれるんじゃないか〉と、感じるのだろう。その思いがピッチングを慎重にさせボール球を多くさせる。この日の2四球にそんな成長を感じながら見た。

   

清原の持つ勝負強さ

 ここで5番清原の話題にも少し触れておく。
 岡田の2つ目の四球でチャンスを広げた5回2死満塁の場面で、見事、右中間へ走者一掃のタイムリーツーベース。1000人弱のスタンドの期待に応えるバッティングで、清原はその日の主役になった。
 この試合の打撃成績は、3打数1安打で前の2打席は連続三振。その中では今井の130キロ台後半のストレートにバットが合わず、真っすぐは4球すべて空振りだった。

080512kiyoharaこれまでにも多くの修羅場で勝負強さを示してきた清原和博。故障からの復帰を目指す姿を間近で見て、岡田はどう感じたか?

 本人が「まだまだリハビリの一環。(1軍)どうこういうレベルじゃない」と言っている通り、ようやく7、8分の力で振れるところまで来たというのが現状だ。
 試合前のフリーバッティングも目慣らし程度で、打席に立ってもフルスイングはせず、ほとんどが当てるだけ。まだまだ時間はかかりそうだ。
 しかし、そんな中での第3打席。
 この試合5回目となる空振りのあと、1-1からの外寄りの真っすぐに初めてバットが当たった。すると打球はセカンドの頭もフラッと超えて右中間をゴロで転々…。3人のランナーを全てホームに迎え入れた。決して痛烈な当たりではなかったが、こういうチャンスで結果を出すのが清原。この勝負強さは岡田も継いでいってほしい。

       

甘い球をひと振りで捉えよ!

 話を戻して岡田の第4打席。ここでは左腕・広池からセンター前にヒットを放った。
 この1本にも、先の四球の話にもつながる成長を感じた。
 打ったのは2-2からの真ん中低めのスライダーか、少し抜いたボール。サウスポーのそんな決め球に、去年までの岡田なら態勢を崩して空振り三振となってもおかしくなかった。それが体を何とか残して最後は右手で拾ってセンター前へ落とす。こういうバッティングをされると、相手投手には「手強いな」という印象が残るだろうし、サーパスベンチの信頼感は徐々に増していくはずだ。
 豪快な一発は見られなかったが、2つのフォアボールに渋い1本のヒットは、僕の気分を明るくしてくれるものだった。
 確実に成長中。一塁側の記者席から試合を見ていたコリンズの目にもきっとそう映ったことだろう(?)。
 これからは、いかにミスショットをなくすことができるか。相手が警戒してくるということは、当然、甘いボールがくる確率は減るということ。1打席の中で1球あるかないかの好球をいかに捉えるか。この日も、第2打席にセカンドゴロに倒れた真っすぐや、第4打席にもファウルにした甘いスライダーがあった。これらを捉える確率が上がれば、1軍もグッと近づいてくるはずだ。

 岡田ファンのみなさん、爆発の日までもう少し、お待ち下さい!

080512okada_kiyohara左に清原、右に岡田。この姿をぜひ、オリックスのユニホーム姿で今年中に見てみたい

        

★更新前日の11日、ヤフードームで行なわれたソフトバンク戦は3打数ノーヒットで3三振。最後は代打を送られていたが、ソフトバンクの投手リレーを見ると新垣→森福→ニコースキー→高橋秀。1軍さながらの顔ぶれで、まして新垣のスライダー、フォークは、初対決の岡田にとっては「とんでもないボール」に見えたはず。〈いいものを見た〉と思って、次に生かしてほしい。

        

■2008年ファーム成績(5月11日現在)
26試合 90打数24安打 2本塁打 12打点 15四死球 21三振 打率.267(打撃成績18位)

           

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは毎月1日、11日、21日頃に更新しています。次回更新は5月21日の予定です。

2008-05-01

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第75回-

Okada_stretching 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。本日で75回目の更新です。   

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
 2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団。2年目の昨年は、シーズン前半こそ不調だったものの、北京で開かれたオリンピックプレ大会での活躍を契機に後半復調しました。
 そして、期待がかかった3年目。開幕は2軍スタートとなったものの、ウェスタンリーグでは出だしから好調です。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でレポートいたします。今回はどんな内容になっているでしょうか?

         

Okada_batting02本人曰く「絶好調から絶不調」も、試合後の打撃練習では柵越えを連発

今の岡田の調子のほどは?

「絶好調から絶不調です」
 岡田からこんなセリフを聞いたのは4月30日の神戸サブ球場。関西メディカルスポーツ学院との交流戦が行なわれた試合前だった。バッティング練習を終え、ベンチ裏の通路で軽食を取っていた岡田に話を聞けたので「どう?」と向けたところ、自嘲気味にこう返ってきた。
 言葉通り、前回の更新以降の岡田は、4試合で12打数1安打。四死球4つに、三振も1つと少なめだったが打率は急降下で一気に3割を割ってしまった。そこで状態を確認すべく30日に観戦に向かったのだが、残念ながらこの日は欠場。ただ、アクシデントがあったわけではなく、ファームでも出番の少ない選手に経験を積ませようという首脳陣の考えによるものだ。
 しかし、この日は僕の到着が遅く、試合前のフリーバッティングを見ることもできなかった。そこでちょっと困っていたところ、まず本人に少し話を聞くことができた。冒頭のひと言以降はこんな感じで続いた。

谷上 絶好調からいきなり絶不調って。ちょっと早いなあ。
岡田 いや、(好調が)持った方ですよ。
谷上 自分でそんなこと言うて…。でも、開幕から1カ月。確かにこれまで2年にない出足ではあったよな。
岡田 そうですね。
谷上 でも、好調だっただけに、その間に1軍に上がりたかったという気持ちも強かった?
岡田 それはありました。(1軍の首脳陣が)見てる前でも打ったんですけどね、なかなか…。このまま今年は上がられへんのちゃうかって思ったこともありました。
谷上 見てる方も期待してたけど。でも、まだ始まったばっかりやから、またここから。
岡田 今日の試合前に小川さん(博文・育成兼野手コーチ補佐)にいろいろ見てもらって、ちょっといい感じになったかなというのはあったんです。だから試合でどうかです。
谷上 再浮上の兆しは感じてる、と。1軍の選手も状態がいいわけじゃないんやから頼むで。
岡田 そのつもりで頑張ります。

           

小川コーチの力強い岡田評

Ogawa_coach_3岡田を指導する小川博文コーチ。現役時代は小柄ながら一発もある勝負強い打者としてオリックス黄金時代に活躍

 実はこの前日にラロッカ、北川博敏と共に長田昌浩が1軍へ上がっていた。成績的に見れば、規定打席不足で打率も.241の長田を上げるなら岡田を…、と思いたくなるが、セカンドというポジションとの絡みはあったのだろう。ただ、こういう昇格はやはり岡田にとって面白いはずもない。その心中は理解できる。
 しかし、ちょっと元気のなかった本人のセリフとは逆に、小川コーチからは力強い言葉も聞いた。

小川 絶対、1軍に上がる時が来ます。僕が決めることじゃないですけど、必ず来るし、僕は早く勝負させてやりたいと思ってます。

 さらにこんな言葉も。

小川 長いシーズンでは調子のいい時も悪い時もある。その結果に一喜一憂するんじゃなくて、1日1日やるべきことをしっかりやっていくこと。でも、一方でファームとはいえ4番も打ってるんだから、成績が出ていれば余計相手の攻めも厳しくなる。その中で結果を求めていかないといけない。自分に求められているもの、期待の大きさをしっかり感じてやってほしい。

        

試合後の特打ちでは絶好調

 サーパスの大勝(9対0)で終わった試合への出場はなかったが、試合後の特打ちに岡田が現れた。これは僕にとってラッキーで木元邦之、小瀬浩之と3人で回った打ち込みをじっくり見ることができた。そしてこの時の内容が不振などどこの話? というくらいに良かった。
 数えていなかったが、かなりの割合で打球はオーバーフェンスし、その飛び方がまた良かった。あっけに取られて見ていると、小川コーチも
「スゴイ! 今日は完璧です!」
と嬉しそうに歩み寄ってきてそう言った。

 そこから2人で快音連発のバッティングを見ながら、再び小川コーチに話を聞いた。
 試合前に岡田が「小川さんにいろいろ見てもらって」と話していた部分について聞くと、小川コーチは「アイツの“ここ”を見て下さい」と、自らの左股間節部分を指した。

Okada_and_kimoto打者のタイプにもよるが、今の岡田(右)は股関節に体が乗っかっているため、左足の付け根にシワが寄っているのが分かる(左は木元邦之)

「投げるのも打つのも一緒。大事なのは股間節で、岡田の場合なら左の股間節。テークバックの時に軽くねじってギュッと体を入れて、左の股間節に乗せてから打ちに行く。この形ができれば間も持てるし、自分の形でスイングできるようになる」

 股間節の重要性については昨秋、岡田本人から小川コーチの指導について尋ねた時に耳にしていた。そういう意味では継続的に取り組んでいるのだが、「何回も言って、体で覚えていかないといけない」(小川コーチ)ということだ。
 ちなみに小川コーチは現在「育成コーチ」という肩書きになっており、チームの遠征には同行しない。岡田にとっては常に小川コーチが同行することが望ましいと思うが、こればかりは仕方がない。小川コーチの教えをしっかり頭に叩き込み、「いい形」を身につけていくしかない。
 特打ちで並んで打っていた木元の形と比べると小川コーチの指摘がよくわかった。木元には木元の形があるとして、木元の1本足は右足を上げて、すぐ下りる感覚があった。グッと入る形がないのだ。
 一方、足上げの幅はかなり小さくなった岡田だが、上げた時に左股間節部分のユニフォームに深いシワが刻まれていた。見た目には微妙だが、それだけ体が絞られ、股間節に体重も乗っていることがよく分かった。

        

浮上のバロメーターは股関節

 股間節ということで思い出すのは1月に神戸で合同自主トレを行なったイチローだ。あの時、イチローはアップで1本ダッシュをするたびに入念にストレッチを繰り返していた、そして、そのほとんどが股間節の柔軟性を意識したものだった。似た動きをした時の岡田と比べると柔軟性の違いは歴然だった。
 イチローも決して体自体は柔らかくなく、むしろ硬いと言われている。しかし、こと股間節に限れば柔軟性は抜群で、股間節を十分に使い切っているからあのキレもパワーも生まれるのだ。
 比べて岡田はストレッチの動きなどを見てもまだまだ股間節が硬い。この柔軟性がバッティングに大きな影響を及ぼすとしたら…グラウンドでも寮でも時と場所を選ばず徹底して柔軟性を高める動きを繰り返してほしい。本人の目に止まるかどうかわからないが、もし、目にすることがあれば“あの時”を思い出してほしいという願いも込め、イチローとの自主トレ風景を掲載しておく。
 浮上のポイント、バッティング安定のひとつのカギは股間節にアリ! あくまで僕の個人的意見に過ぎないが、遠からずという気はしている。

Ichiro_and_okada股関節のストレッチの際にはイチロー(左)と行った自主トレの時を思い出してほしい。ダッシュのたびにストレッチを行っていた姿は印象的だった

 今後も股間節の絞り、滑り、乗せに注目していきたい。

■2008年ファーム成績(4月30日現在)
20試合 71打数21安打 2本塁打 9打点 10四死球 15三振 打率.296(打撃成績10位)

           

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは毎月1日、11日、21日頃に更新しています。次回更新は5月12日の予定です。

2008-04-21

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第74回-

080421okada_top 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。本日で74回目の更新です。   

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
 2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団。2年目の昨年は、シーズン前半こそ不調だったものの、北京で開かれたオリンピックプレ大会での活躍を契機に後半復調しました。
 そして、期待がかかった3年目。開幕は2軍スタートとなったものの、ウェスタンリーグでは出だしから好調です。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でレポートいたします。今回はどんな内容になっているでしょうか?

         

080421okada_batting開幕当初の好調の波は一度過ぎ去った。しかし、今年の岡田は悪いなりに結果を残している

岡田は4番でしぶとく結果をつなぐ

 まず、前回更新以降の岡田の成績から書いておくと以下の通り。

12日 阪神(甲子園)3打数1安打 1四球
13日 阪神(甲子園)3打数1安打
15日 ソフトバンク(京セラドーム)3打数2安打 1三振
16日 ソフトバンク(北神戸)3打数1安打 1四球 1三振

 この間のサーパスは1勝3敗1分けと振るわなかったが、4番で出場を続ける岡田は決して好調ではないであろう中でもしぶとく数字を残している。
 前回の更新でも書いたが、こういう状態の中で1本のヒットが出るかどうか、1つのフォアボールが選べるかどうかが大きいのだ。

 それにしても、これだけ1軍が打てなくて、ファームに打っている選手がいるのだから、もっと積極的な入れ替えがあっていいと思うのだが…。
 17日にラロッカのファーム落ちのニュースを聞いた時にも〈もしや…〉と思ったが、翌日に上がったのは牧田勝吾だった(21日には再び抹消)。ポジションの絡みで岡田が上がる時は外野かファーストを守る選手と入れ替わる可能性は高いのだろう。となれば突発的な故障者でも出ない限り“ライバル”は絞られてくる。彼らの成績を見ていくと、開幕から不振が続く濱中治(打率.185)、起用は増えながらもなかなか数字を出せない迎祐一郎(.143)、昇格初戦の2安打以降、音なしの古木克明(.182)、ポジションは異なるが同じ左バッターで結果の出ない木元邦之(.100)…と、不振者がズラリ。

 もっとも、チーム打率が.218と上昇の気配が見えない1軍打撃陣を見ればほとんどのバッターが低打率であえいでいる。少しは当たり出したと言ってもカブレラの打率もまだ.202、結構頑張っている印象のあった下山真二でも.238。さらに内野陣に目を移せば、大引啓次.143、後藤光尊.177、阿部真宏.118…、と深刻な状況が浮き彫りになる。二遊間の選手は簡単に入れ替えることもできないのだろうが、坂口智隆、ローズ、日高剛にサブで村松有人、塩崎真を含めた5人以外、1軍の打撃陣はまったく打てていないのが現実だ。

        

オリックスの積極的若手起用化の声にはやや疑問

080421okada_running021軍では極度の打撃不振が続いている。ファームには岡田はもちろんのこと、一輝、吉良なども好成績を挙げているのだが…

 一方、サーパスに目を移せば、チーム打率の.270はリーグトップ。この高打率を支えているのが21日現在、打率339で打撃成績リーグ5位の岡田と、同8位で.321の一輝。あるいは規定打席不足ながら.350と、ここへ来てようやくバッティングが安定してきた吉良俊則といったところだ。
 しかし、そういう結果を出している選手が極度の打撃不振に陥っている1軍に呼ばれることがない。「今年のオリックスは若手を使うようになった」という声をよく聞くが、僕はいつも首を捻る。
 野手でいえば坂口、投手陣でいえば金子千尋、近藤一樹らの活躍がそう思わせるのだろうが、例えば坂口は去年も開幕スタメンに登場していた「1軍でやって当たり前のレベル」にあった選手で、プロとしては今年6年目。見方によっては中堅どころと言ってもいいほどだ。
 また、近藤やその前後にあった高木康成や香月良太の先発起用も故障者続出でやむなくの処置だった。今のような状況の中、チームの起爆剤となるべく期待を込め岡田や一輝あたりをスタメン起用でもして初めて積極的な若手起用と言えるはずだ。他チームでは1軍昇格即スタメン、なんていう話を聞くが、オリックスはそういう起用がまずない。仰木さんの時代が懐かしい。

         

080421okada_running打撃主体のタイプとしては、岡田は走って守れる選手。1軍でもその効果に期待が持てる

岡田の早期昇格を願う日々はまだまだ続く?

 嘆いてばかりいても仕方ないので、気分を変えて岡田に関する数字を出してみた。
 最近はメジャーの影響を受け、打率やホームラン、打点といった項目以外に打者を評価する向きが出てきた。その代表格が日本球界でも徐々にポピュラーになりつつあるOPSだ。
 OPSとは出塁率と長打率を足した数値で、総合的な打者の評価の指針となると見られているものだ。岡田の場合、出塁率が.394(リーグ8位)で、長打率.508(5位)。一般的に1軍でこの数値が9割を超えると一流打者と言われるが、岡田はファームとは言え.902でリーグ4位。ちなみに上の3人は順に打率も3割を超え、この時期にして異例の8死球も効いている上村和裕に山本芳彦、松山竜平とオール広島勢だ。
 岡田のOPS.902を強引にもパ・リーグのリーグ成績に当てはめると山崎武司(楽天)の1.185、ローズの1.074、ブラゼル(西武)の.920に次ぐ4位。1軍と2軍を比べてどうする、という声はもちろんだが、ファームとはいえ、これだけの数字を残しているということ。そして、そんな選手が、何度も書くが打撃不振にあえぐ1軍に上がれないことには、やはり、なんだかな…、と嘆きたくなる。

 また、こういう数字とは別に、数字に見えない部分も強調しておきたい。
 13日の甲子園のゲームがCS放送で中継されていたので録画して見た。すると、その中でこんなシーンがあった。
 1点を追うサーパス8回表の攻撃。
 先頭で打席に入った岡田は正田樹(阪神)からライト戦へ痛烈なライナーのツーベースで出塁すると、2死後、吉良の渋く1、2塁間を抜けるライト前ヒットでホームインしたのだ。1点差で前進守備を敷いていた阪神のライト・庄田隆弘が捕ったのは、通常ならセカンドの定位置の数メートルうしろといった場所だった。そこから強肩の庄田がワンバウンドでバックホーム。まさにホーム上は間一髪のクロスプレーとなったが、岡田の足が一瞬早く、さらに岡田の勢いで返球を弾き飛ばし同点のホームインを決めた。岡田の「足」が試合を引き分けに持ち込ませたわけだが、濱中や古木にカブレラ、ローズではあの当たりで1点は取れなかっただろう。

080421okada_batting02今年はまだ披露していない1軍のユニホーム。岡田がこの姿で登場する日を待っている

 ここでは何度も書いてきたが、少なくとも一発を売りにするようなタイプの中では岡田は足がある方だし、走ろうとする意欲も持っている。一塁での守りも含め、数値に表れない面でもチームに貢献できる選手なのだ。

 16日の試合では北川が「3番ファースト」でファームの戦列に復帰し、また1人“ライバル”が増えた格好だ。こちらは早々に1軍へ上がっていくのだろうが、名前や過去の実績にとらわれず、コリンズには思い切った、そして先も見据えた起用を切に願うばかりだ。

               
 
■2008年ファーム成績(4月21日現在)
16試合 59打数20安打 2本塁打 9打点 6四球 14三振 打率.339

 
              

(取材・本文/谷上史朗)

このシリーズは毎月1日、11日、21日頃に更新しています。次回更新は4月28日の予定です。

2008-04-11

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第73回-

Top_okada080411 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。本日で73回目の更新です。   

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
 2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団。2年目の昨年は、シーズン前半こそ不調だったものの、北京で開かれたオリンピックプレ大会での活躍を契機に後半復調しました。
 そして、期待がかかった3年目。開幕は2軍スタートとなったものの、どうやら事態は良い方へ向かい始めたようです。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でレポートいたします。今回はどんな内容になっているでしょうか?

           

9日のウエスタン中日戦を観戦

Okada080411試合前に話を聞いたときの岡田選手。好調なスタートに対しては相変わらずマイペースな反応だった

 前回、久しぶりに絶好調を伝えるレポートを書くことができ、さあ、今回。前回更新日の4月1日と2日に雁ノ巣でソフトバンクと2連戦が行なわれた。
 ここでもうひと暴れしていれば、その頃貧打に喘いでいた1軍から呼びがかかったかもしれないが、福岡遠征から戻り、5日から1軍に合流したのは古木克彦だった。
 この時点で古木もウエスタンリーグで3割5分を超える高打率を残し、打撃成績でも岡田のすぐ下にいた。好調を保っていた上に1日のソフトバンク戦で一発も放ち、今回はこちらが選ばれた格好だ。おそらく、岡田と古木のどちらを上げるか、という選択になったのだと思う。
 しかし、好調をキープしていけば、近いうちに昇格のチャンスは必ず巡ってくる。そこで“その後”の状態を確認すべく9日に「あじさいスタジアム」で行なわれた中日戦を取材してきた。

 試合開始1時間前に到着すると、球場入口で岡田が携帯電話をかけていた。治療院か何かに予約を入れているようだったが、電話が終わったところで一声かけた。

谷上 出だし好調やな。
岡田 う~ん、広島戦は良かったんですけど、最近ちょっと落ち気味ですね。
谷上 早いな(笑)。でも、とにかく滑り出しとしてはここ2年にない好調。その広島戦あたりは自分でも“この感じ!“っていうものがあった?
岡田 いや、特に何か違ったっていうのはなかったんですけど。
谷上 じゃあ、そこからちょっと調子が下ってきいるっていう今は何かが違ってきてる?
岡田 それも特になくて。今も小川さん(博文・オリックスコーチ)には形は悪くないって言われてるんで。
谷上 そういう中で爆発する日もあれば、そうでない日もある…、と。なら、今日はとにかく期待してるから、頼むで。
岡田 はい。

    
崩されたヒットも大切

 福岡から戻って以降のサーパスは、5日、6日と神戸サブグラウンドで社会人の三菱重工神戸、新日鉄広畑と交流戦を行い、8日は中日との3連戦初戦を戦っていた。
 この間の岡田は、5日が出番なし。6日は2打数ノーヒットで、三振、四球が1つずつあり、犠牲フライによる打点が1。そして、8日は4打数1安打、1三振という成績だった。
 5日の欠場はその日、1軍が京セラドームで試合を行なっていたため、もしかすると試合前の練習に参加し、首脳陣が古木と2人の状態を確認したのかも…という気もしていたが、それは聞きそびれてしまった。

Okada_swing080411「4番・ファースト」で出場した9日の試合。岡田は決していい状態ではなかったが、その中で1安打1四球。しぶとく結果を残した

 とにかく、名古屋での開幕戦以来の観戦に気合を入れてネット裏に座ってじっくり観た。公式戦では僕も初めて「4番ファースト岡田」のアナウンスを聞いた。
 で…、結果からいうと3打数1安打、1四球、1三振。順にセカンドライナー、センター前ヒット、空振り三振、フォアボールという内容だった。
 3打席目までの相手投手は右腕の清水昭信で、4打席目はサウスポーの菊地正法。ヒットもセカンドライナーも芯でとらえた打球ではなく、三振はワンバウンドの変化球に完全に崩されてのもの。この日に限ってはボールの見極めも含め、試合前の本人の言葉通りもうひとつだったようだ。
 しかし、そういう中でもヒットを打ち、フォアボールを選んだことは評価できる。調子のいい時はみんなある程度は打つ。調子の落ちてきた時、打席で崩された時にどれだけしぶとくヒットを打ち、フォアボールを選べるか。ここで打率も大きく変わってくるのだ。

             

藤井康雄氏の岡田評

 この日のネット裏には、今年からオリックスの編成担当となった藤井康雄さんが来ていた。岡田の1年目にはコーチとして、2年目にはスカウトとなり、今年は編成担当。今は立場上、選手に関しあまり込み入った意見を口にすることはできないが、岡田の状態を見ての率直な感想を聞いた。

「去年までと比べて良くなったのはタイミングの取り方でしょうね。タイミングが取れるようになったから、今年は初球から手が出てる。1年目、2年目はなかなか最初から振れなかったからね」

 前にここでも書いたが、高校時代の姿を思い出しても、岡田は本来初球から手が出るバッターだ。プロに入ってからも調子のいい時は初球からバットが出ている。そのいい形が今年はスタートから続いているため目立つのだろう。いい傾向だ。
 一方で藤井さんはこうも言った。

「まだバットが少し外から出てくるんですよね。これがスパッと内か出るようになれば、もっと良くなってくるんですけどねえ…」

 この点は1年目から藤井さんが指摘し、いろいろと練習でも取り組んできていた点だ。

 確かに1軍で活躍している、例えば小笠原道大(巨人)やメジャーへ渡った福留孝介(カブス)のスイングなどを思い出してもらうと、読者にも「内から出る」という形が浮かびやすいと思う。前のヒジもそうだが、うしろのヒジを締めて、絞って内から外へ振り抜くスイング、あのイメージだ。
 以前、やはり内からバットの出る印象の強い西岡剛(ロッテ)に話を聞いた時は「(左打席の)左ひじに意識を置いて脇を締めて、体の前にヒジを持ってくるイメージで振っている」と話していた。そういう選手の意識はやはり、後ろ手のヒジに対して強いようだ。果たして岡田は…。

Okada_running080411岡田は決して打つだけの選手ではない。今シーズン、まだウエスタンリーグで盗塁は決められないでいるが、積極的にスタートを切っている

 内からバットが出ればヘッドも遅れてしなって出てくるようになりヘッドが効く。振り出しも遅くなるのでわずかでもボールを長く見ることができる。当然、ヒットゾーンも広くなる…。と、まあ、いいことだらけというワケだ。
 岡田の打撃レベルがもうワンランク上がり、1軍でバリバリ活躍するようになるのは、このインサイドアウトのスイングを完全に身につけた時なのかもしれない。

 

打って、守って、走って、1軍昇格を待つ

 また、もうひとつ。この日の試合のことで加えておきたいことがある。それは、4回にヒットで出たあとの走塁だ。
 二塁盗塁を試みてアウトになったのだが、おそらくは単独盗塁だったはず。このアウトで盗塁死は3つ目となり