谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第81回-
2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。本日が第81回となりました。
大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団後、主としてファームで経験を積みながら迎えた3年目。ウエスタンリーグ開幕当初は好調なスタートを切ったものの、ここへ来て急失速。1軍定着へ向け、早期復調が待たれます。
そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でレポートいたします。今回はどんな内容でしょうか?
1・2軍親子ゲームで本人を直撃
朝8時頃の大阪ドームの外観。澄み切った青い空の下、歩道には通勤者の人影もちらつく |
更新日の1日は朝から京セラドームへ向かった。
この日は1軍と2軍の親子ゲームが行なわれることになっており、サーパスは阪神と10時45分から試合が組まれていたのだ。練習は8時前から始まっていて、僕が着いた8時半にはサーパスの打撃練習の真っ最中。柴田と組んでティーを打っていた岡田は間もなくゲージに入った。フリーバッティングを見るのは久しぶりで、復調の気配を少し感じたい、と目を凝らして見たが…。う~ん、微妙。これは本人に確認するしかない、とバッティング練習に続き、外野でのダッシュを終え一塁側ベンチへ戻ってきたところで岡田を捕まえ話を聞いた。
谷上 どん底は脱しつつある?
岡田 いや、全然です…。
谷上 どないなったんや?
岡田 どうなってるんですかねえ…。土日の遠征(名古屋)には行かずにこっちに残ってやってて、その感じは悪くなかったんですけど。
谷上 さっきのバッティングの感じは?
岡田 あんまりです。なんかバラバラで、捕えられる感じがしないっていうか…。
谷上 出足の好調から何がどうなってそうなるんかなあ。
岡田 ちょっと調子が落ちて、いろいろ考えてるうちに、どんどんおかしくなったっていったっていうか…。
谷上 今は状態を上げるためにどういうことを意識してる?
岡田 小川さんに言われたことを思い出して。1つは割る形です。この形さえちゃんとできたら7割はできたと同じって言われてたんで。もう1つは、そこから打ちに行く時に右肩が突っ込まないというか、肩は残してバットを出していくということです。
谷上 小川さんが1軍へいったことも大きい?
岡田 あるのはありますけど…。でも、もう自分がやっていかないといけないんで。
谷上 そらそうや。今日は出番あり?
岡田 わかんないです。(親子ゲームのため)上から手伝いにきてる人もいるんで…。
谷上 でも、気持ちを切らさんとやっていかんと。まだシーズンは半分あるから。
岡田 やるしかないですよね。
谷上 でも、正直、焦ってる?
岡田 やばいです。この3年の中で一番やばいです。
1軍首脳の前でアピールしたかったが…
この日のウエスタンリーグ公式戦のスタメン。岡田は6番ファーストで出場した |
前回の更新以降、サーパスの試合は6月28、29日の中日戦だけだった(29日は雨で中止)。しかし、岡田は不振から神戸に残り練習をしたので、この日は10日ぶりの試合はだったわけだ。
スタメンが発表されると「6番ファースト」で出場。この日は1軍首脳陣も姿を見せており、復調気配を見せたいところだったが…。
試合は阪神の先発がボーグルソン、オリックスは梶本達哉でスタートした。岡田の第1打席は2回裏、5番・古木克明のゲッツーで走者なしとなった場面で回ってきた。
その初球。岡田は真ん中高めの140キロ台半ばのストレートをセンターへ弾き返した。しかし、ライナーで飛んでいった打球をセンター庄田隆弘が背走しキャッチ。岡田本来の2段階に加速しながら伸びるような迫力がなかった。
ただ、初球から手が出たことも、当たり自体も悪くはない。希望を持って2打席目以降を待つことにした。
その第2打席は2点を追う4回、2死満塁の場面で回ってきた。アピールには絶好の場面だったが、ここがいけなかった。
初球、外のストレートを見逃し。2球目、外のストレートをファウル。簡単に追い込まれると最後は外の146キロのストレートに空振り。3球三振の結果に、ネット裏を中心に集まったオリックスファンからもため息が漏れた。
ゲッツーで2死走者なしとなった直後に対した1打席目と、一打同点の場面で立った2打席目ではボーグルソンのボールも気持ちの入り方が違って見えた。まさに1軍のボールで、残念ながら現状の岡田ではついていけなかった。
第2打席では2死満塁のチャンス。しかし、阪神先発・ボーグルソン1軍クラスの投球に3球三振。この試合の2打席を見る限り復調にはまだ時間がかかりそうだった |
不調の原因は気持ちの問題か?
快調なテンポで進んでいた試合は阪神が4回に2点、5回に3点と得点を重ね一気にペースダウン。この日は親子ゲームのため2時間半を超えて新しいイニングに入らないという決まりがあったが、それとは別に僕は時間が気になっていた。というのも実は、12時45分からドーム内の一室で水口栄二バッティングコーチに別件の取材をすることになっていて、試合途中で席を離れなければならなかったからだ。
前半の快調な進行から3打席は確実に見れる、と踏んでいたが、得点が0対7となり、6回裏のサーパスの攻撃が始まるところで広報から携帯に連絡が入った。ここで僕の観戦は終了となり、今回の岡田観戦の2打席のみ。3打席目の結果は確認できなったが、その日の感じでは大きな期待は出来なかったように思えた。残念ながら…。
試合途中、スタンドにいた編成部の藤井康雄氏に少し話を聞くと、岡田のバッティングについてこんな感想を口にしていた。
「テークバックで左肩が背中側に入ってるなあ。ああなると、打ちに行く時に反動で開きやすくなるんですよ。いろいろあるけど、その点がひとつ気になりました」
一方、ある球団関係者からは、若手全体に言えることとして、こんな厳しい声も聞こえた。
「なかなか殻を破れない選手というのは技術より気持ちの方なんじゃないですか。3年、4年ファームにいるということは1軍から見れば補欠。高校や大学で3年も4年も補欠なら恥ずかしいと思うでしょう。でも、プロの世界にいることで安心してしまうようなところがあるんですよね。本人はもちろん一生懸命やってます、と言うけど、どこまで本気で1軍の9つのポジションを狙ってるのか。ひとつ思うのは、若手で私生活が充実してたらダメですよ。1軍に上がるまではすべての時間を野球に使うくらいでないと、本気でレギュラーを狙ってるヤツには勝てない」
思い出の地・舞洲で蘇るか
結果が出ないと、当然、いろんな声が出てくる。それがプロの世界だ。岡田に関しても、日々、向けられる視線が厳しくなっているのは当然で、そこは誰より本人が感じているはず。その評価をどこで変えられるか…。何かきっかけがほしい。
観戦した翌日の阪神戦は舞洲ベースボールスタジアムで行なわれることになっていた。舞洲と言えば、大阪の高校野球のメイン会場。岡田にとって履正社時代の思い出が詰まった場所だ。前にも書いたが3年夏の準決勝で、大阪桐蔭に敗れた一戦の最終回、バックスクリーンへ意地の一発(通算55号)を見せたのもの“ここ”だった。打った相手は1年生当時の中田翔だった…。
試合前のベンチでの別れ際、『明日は思い出の球場やな」と言うと、岡田も表情を緩め「はい」。
何かを思い出すきっかけになってくれれば・・・。
当人たちはもちろん日々一生懸命練習に励んでいるだろうが、その中でさらに抜出さなくてはならないのがプロの世界。岡田にも技術的、精神的なきっかけが求められる |
試練の毎日が続く。
■2008年ファーム成績(6月30日現在)
48試合 159打数34安打 2本塁打 14打点 24四死球 37三振 打率.214(打撃成績14位)
(取材・文/谷上史朗)
このシリーズは毎月1日、11日、21日頃に更新しています。次回更新は7月11日頃の予定です。

朝8時頃の大阪ドームの外観。澄み切った青い空の下、歩道には通勤者の人影もちらつく
この日のウエスタンリーグ公式戦のスタメン。岡田は6番ファーストで出場した
第2打席では2死満塁のチャンス。しかし、阪神先発・ボーグルソン1軍クラスの投球に3球三振。この試合の2打席を見る限り復調にはまだ時間がかかりそうだった
当人たちはもちろん日々一生懸命練習に励んでいるだろうが、その中でさらに抜出さなくてはならないのがプロの世界。岡田にも技術的、精神的なきっかけが求められる
2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ
今季、1軍でローテーション入りした近藤一樹。昨年までは岡田と同様、ファームでの生活がほとんどだった
アマチュア時代からの苦労を経て、現在1軍で活躍中の下山真二
2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ
中日ドラゴンズ、落合博満監督。現役時代は独自の打撃理論で3度の三冠王を獲得
岡田選手の連続写真。体の中心線の移動距離に注目して欲しい
2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ
就任後、新しい色を出し始めている大石大二郎監督代行
開幕から好調だった岡田の打撃もここへ来て急降下。なんともタイミングが悪い
小川博文育成担当は1軍の内野守備走塁コーチに昇格。このあたりも影響しているのだろうか?
2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ
5月21日の阪神戦を最後に辞任することを発表したコリンズ監督
20日に行われた1軍の阪神戦で逆転タイムリーを放ち、お立ち台に立った一輝(写真はサーパスでプレー中のもの)
昨年の日本シリーズなどで活躍した平田良介。今年は出遅れたが、ようやく1軍に昇格してきた
監督代行の任に着いた大石大二郎氏。2軍監督時代は岡田をファームで辛抱強く起用し続けた
2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ
「4番岡田、5番清原」と並んだこの日のサーパスのオーダー
岡田の成長の跡は、四球の数にも見られる。昨年までのもろさが減り、相手に与えるプレッシャーも増した
これまでにも多くの修羅場で勝負強さを示してきた清原和博。故障からの復帰を目指す姿を間近で見て、岡田はどう感じたか?
左に清原、右に岡田。この姿をぜひ、オリックスのユニホーム姿で今年中に見てみたい
2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ
本人曰く「絶好調から絶不調」も、試合後の打撃練習では柵越えを連発
岡田を指導する小川博文コーチ。現役時代は小柄ながら一発もある勝負強い打者としてオリックス黄金時代に活躍
打者のタイプにもよるが、今の岡田(右)は股関節に体が乗っかっているため、左足の付け根にシワが寄っているのが分かる(左は木元邦之)
股関節のストレッチの際にはイチロー(左)と行った自主トレの時を思い出してほしい。ダッシュのたびにストレッチを行っていた姿は印象的だった
2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ
開幕当初の好調の波は一度過ぎ去った。しかし、今年の岡田は悪いなりに結果を残している
1軍では極度の打撃不振が続いている。ファームには岡田はもちろんのこと、一輝、吉良なども好成績を挙げているのだが…
打撃主体のタイプとしては、岡田は走って守れる選手。1軍でもその効果に期待が持てる
今年はまだ披露していない1軍のユニホーム。岡田がこの姿で登場する日を待っている
2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ
試合前に話を聞いたときの岡田選手。好調なスタートに対しては相変わらずマイペースな反応だった
「4番・ファースト」で出場した9日の試合。岡田は決していい状態ではなかったが、その中で1安打1四球。しぶとく結果を残した
岡田は決して打つだけの選手ではない。今シーズン、まだウエスタンリーグで盗塁は決められないでいるが、積極的にスタートを切っている