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2008-06-24

谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第80回-

Okada_top080624 2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。本日が80回目の更新です。

 大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
 2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団後、主としてファームで経験を積みながら迎えた3年目。ウエスタンリーグ開幕当初は好調なスタートを切ったものの、ここへ来て急失速。1軍定着へ向け、早期復調が待たれます。
 そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でレポートいたします。今回はどんな内容でしょうか?

       

複雑な気持ちで更新する第80回

 このレポートもついに80回目を迎えた。しかし、これは決してメデタイことではない。レポートをスタートさせた時点では、「岡田が1軍に定着するまで」をひと区切りの目安にしていたからだ。
 1軍に定着すれば毎日の活躍は新聞やテレビのニュースで報じられるようになり、ここで伝えなければならない理由も少なくなる。そう思っていたのだが…。
 だから、80回目を迎えて書き続けていることにちょっと複雑な気分でもある。ただ、こうなれば、岡田が本物になるまでトコトン追いかけるつもりだ。

 さて、依然、岡田の不調は続いているようだ。「ようだ」というのは、過去2回に続いて今回も僕が観戦には向かえなかったのだ。
 手元のスケジュール帳には6月14、15日のソフトバンク戦(あじさい)も、17、18日の阪神戦(鳴尾浜)も、20日からの広島3連戦(あじさい、2試合目は雨で中止)も、しっかり書き込んでいたが、残念ながら時間が取れなかった。
 前回更新日以降の僕は、京セラドームから京都、熊取、梅田、加古川、鳥取、淡路島…と、近場をグルグル回っていた。
 その中で京セラドームには2度取材で訪ねた。どちらも試合前の取材が目的だったが15日の中日戦は残って試合も観戦。グラウンドの戦いを眺めながら、合間合間に浮かんできたのは岡田のことだった。

        

Kondo080624今季、1軍でローテーション入りした近藤一樹。昨年までは岡田と同様、ファームでの生活がほとんどだった

近藤一樹の成長

 その日、オリックスの先発は近藤一樹だった。すっかりローテーション投手となった近藤だが、岡田を追い始めた一昨年、そして去年はほとんどファームで投げていた。
 岡田観戦の中で最もよく見たサーパスの先発投手がこの近藤と今年から阪神に移った阿部健太。僕の中では完全にサーパスのイメージが定着してしまっていたが、近藤は今年一気にチャンスをつかんだ。
 この試合でも、中日先発の中田賢一を向こうに回し、5回までは速球でぐいぐい押す力投で無失点。6回につかまり4失点でマウンドを降りたが、投げっぷりには自信が漲っていた。
 昨年ファームで最多勝と最高勝率の二冠を取るなど「兆し」は見せていたが、いい意味で僕の知っている近藤とは、もはや別人である。
 近藤が背中を向けるたびに背番号の「65」がネット裏の席にいた僕の方へ向いた。この背番号に去年の秋を思い出した。
「この秋は55と65。この2人を一人前にせなアカン」
 そう言ったのは当時の住友平2軍監督(現・1軍ヘッド)。夏場から調子を上げていた岡田について話を聞いた時
「今の状態なら1軍にはいつでもどうぞって推薦してるんですよ」
と話したあとに先程の言葉が続いた。
 “強化指定選手”に近藤と岡田を指名した形だったが、今、1軍にいるのは近藤のみ…。
 中日戦の試合後、帰ろうとしていると、球場出口のところで私服に着替えた住友ヘッドの姿を見かけた。一瞬、岡田の話題を出そうかと思ったが、思い直し、挨拶だけしてその場を立ち去った。
 チームが負けた直後ということもあったが、何より今の岡田の状態を思えば「1軍ヘッドコーチ」に聞くべきことが思いつかなかった。

       

続々と上に昇格する「サーパスな選手たち」

Okada080624ファームにいた選手がぞくぞくと1軍に昇格をしていく中、岡田も早期復調が望まれる

 この日観戦した試合では、9番ショートで森山周もスタメン出場していた。守備でひとつ「?」というプレーはあったが、打ではヒットも放ち、1軍の中で「普通」にプレーしていた。
 また、その日は出番がなかったが、3回前のレポートで書いた一輝は、18日の巨人戦で今季第1号を放った。3日に1軍昇格を果たした由田慎太郎も出場機会にはなかなか恵まれないが1軍帯同を続けている。「サーパスな選手たち」の姿が目に入ってくるたび岡田を思ったが、果たしてオリックスのユニフォームを着て、当たり前のようにプレーする日はいつになるのだろうか。

 23日現在、ウエスタンリーグでの岡田の打率は.214まで下がった。
 打撃成績13位。これは規定打席到達者の中では最下位となる数字だ。
 選手にとっては、ファームで規定打席に達するということ自体、決して嬉しいものではない。しかも、数字が残っていないとなればなおのこと。リーグトップの48試合出場や186打席も岡田の置かれた状況を示している。

 21日、移動中にメールが届いた。
 岡田貴弘選手を応援する会のY氏からだった。あじさいスタジアムへ観戦に行っていたそうで、メールを開くととこう書いてあった。
『球場へ着いたら1打席目は終わってたんですけどヒットだったようです。また打ったら報告します』
 しかし、その後のメールが届くことはなく、その日は5打数1安打。前回の更新以降の成績も18打数2安打…。光はまだ見えてこない。

        

岡田に伝えたい下山真二のひと言

 とまあこんな感じで、書いている僕の気分もなかなか上がってこない状況なのだが、最後に1軍で活躍中の下山真二の話を少し書かせてもらう。
 実は2度の京セラドーム取材の目的は下山に話を聞くためのものだった。じっくり話を聞くのは初めてだったが、前向きでガッツ溢れるプレースタイルの裏に、数々の壁を乗り越えてきた苦労があったことを知った。
 プロ野球選手になることは子供の頃からの憧れだったが、プロ入りは27歳の誕生日を目前に控えた秋。「ダメならプロは諦めるつもりだった」という日本生命での5年目、覚悟のシーズンにラストチャンスをつかんだ。近鉄の8巡目指名だった。
 プロ入り後も1軍と2軍を何度となく往復しながら、常に前向きな姿勢だけは失わないように心がけてきたという。

Shimoyama080624アマチュア時代からの苦労を経て、現在1軍で活躍中の下山真二

 2年前、下山は1軍の出番に恵まれず、サーパスで姿を見かけることも少なくなかったが、ある時こんなことがあった。雨のため試合途中でコールドゲームになった試合終了後、下山だけがグラウンドに現れ、小雨の中、ティーバッティングを始めたのだ。
 他の選手や首脳陣はバスに乗って帰る支度をしていた時で、時間的にそれほど長いものではなかったが、1軍経験も豊富な下山のそんな姿は僕の中に強い印象を残した。
「やったもん勝ちですからね」
 今回の取材の中で下山から聞いたひと言を最後に岡田にも伝えたくなった。
 今の取り組みが必ずこの先につながると信じ、今はとにかく練習の虫となってほしい。

           

■2008年ファーム成績(6月23日現在)
48試合 159打数34安打 2本塁打 14打点 24四死球 37三振 打率.214(打撃成績13位)

(取材・文/谷上史朗)

このシリーズは毎月1日、11日、21日頃に更新しています。次回更新は7月1日頃の予定です。 

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