谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第76回-
2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。本日で76回目を迎えております。
大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団。2年目の昨年は、シーズン前半こそ不調だったものの、北京で開かれたオリンピックプレ大会での活躍を契機に後半復調しました。
そして、期待がかかった3年目。開幕は2軍スタートとなったものの、ウェスタンリーグでは出だしから好調。明らかに風の向きが変わり始めています。
そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でレポートいたします。今回はどんな内容になっているでしょうか?
成長の跡
「最近の岡田はどうですか?」と、尋ねてきたのは履正社高校の岡田監督。
開催中の高校野球春季大阪大会でベスト4に勝ち上がった11日の試合直後に顔を合わせると、こう逆取材された。
そこで岡田の近況について、簡単に書けば「悪くないし、確実に成長はしています。あとは試合でどう結果を出すか」と返しておいた。
ひいき目かも、地味なものかもしれないが、「確実な成長」を感じたのは5月7日に京セラドームで行なわれた広島戦。この日はナイターで1軍のオリックス対ロッテ戦が行なわれるため、その前、朝の10時45分開始の親子ゲームだった。
通常12時半からの試合開始なら10時過ぎからサーパスのバッティング練習が始まるが、この日はすべてが繰上げの短縮バージョン。8時半にグラウンドへ着くとすでにサーパスのバッティング中で、ちょうど岡田が打っていた。
じっくりは見られなかったが、フリーバッティングでの感じは悪くはない。
全体のバッティングが終わると、岡田にはベンチ前でケーブルテレビのインタビューが待っていた。
「さあ、今日は我らが期待のナニワのゴジラ、岡田選手に登場してもらいます!」
ハイテンションな女性レポーターの前でやや押され気味の岡田。
その様子を僕と一緒に見ていた1軍の佐藤広報は「いろいろイベントにも引っ張り出してトークも鍛えていかないとねえ」と笑っていた。そんな機会を増やすためにも1軍だ!
インタビューが終わり、ベンチへ戻ってきたところで軽く声をかけた。
「絶不調は脱した?」と聞くと、ニヤッとしたあと「まあ、そんな悪くはないんですけど」。「この間の関西メディカル戦のあとの特打ちは凄かったけどなあ」と続けると、「あの時は自分でもよかったです。でも、何が良かったんかは…」。
このところ話を聞くと、だいたいこういう感じになるのだが、打ってみないとその日の状態がわからない。何がどうなるといいのか、何がどうなると悪いのか、がまだ掴めていないのだ。
もちろん、自分でのその点は自覚していて「なかなかいい時が定着しないんですよね」。
「4番岡田、5番清原」と並んだこの日のサーパスのオーダー |
4番岡田、5番清原
この日のサーパスのスタメンには3日に復帰した清原も登場した。
「4番岡田、5番清原」の並びには、やはり特別なものを感じたが、岡田にそのあたりの感想を求めると、しばらくあってこう返って来た。
「切れないですよね」
瞬時に意味が理解できず、ちょっと考えた。そして、清原自身のことを指しているのかと思った。故障続きの中でも気持ちを切らさずにやっていると…。
しかし、そうではなかった。真意は「イニングの最後とかで僕で攻撃が終われないってことです」。
な~るほど。確かに、ここ数日はスタンドもマスコミも注目は清原一色。2死で岡田に打席が回ってこようものなら、それも最終回にでも回ってこようものなら、〈自分では終われない〉ということだったのだ。
「それはいろいろ気を遣います」と言った言葉に、岡田らしいなあ、と思いながら、それもひとつの経験。プレッシャーや刺激がある中でプレーできることは、恵まれているのだ。
最後に「今日はコリンズも来るんやんな?」と聞くと「だと思います」。「一発いきたいな」の誘いに「はい」と表情を引き締めベンチ裏へ消えていった。
四球の急増
さて、そんな中で試合は始まった。
広島先発は今井啓介。結果を先に言うとこの日の岡田は2打数1安打、1四球。
まず第1打席は2死二塁で回ってきたが、フォアボールで歩いた。
次がまだ万全の状態には程遠い清原ということもあったのか、勝負にはきていたが結果はストレートのフォアボール。2席目は2死一、三塁のチャンスにセカンドゴロ。初球、真ん中近辺の真っすぐに見えた球でタイミングも合っていた。が、ちょっと力が入ったのか。もったいない当たりだった。
3打席目は再びフォアボール。広島先発の今井啓介は明らかに岡田には投げにくそうだった。今井は岡田と同じ高卒3年目。やはり同期の中で「岡田貴弘」の名は特別な響きがあるのだろうと思う一方、この2つで今季14個目となったフォアボールの数に岡田の成長を感じた。
岡田の成長の跡は、四球の数にも見られる。昨年までのもろさが減り、相手に与えるプレッシャーも増した |
1年目は82試合、319打席で17個(18.76打席で1個)、2年目は68試合、256打席で14個(18.28打席で1個)。それが今シーズンはこの試合が終わった時点で25試合、103打席で14個。7.36打席に1個の割合で選んでいることになる。
この“急増”の裏には、まずバッティング技術の向上があるはずだ。追い込まれたあとのストライクからボールになる変化球を見極められるようになり、簡単にバットも空を切らなくなった。打席の中でもこれまでより余裕が生まれ、ボールもよく見えるようになっているはずだ(加えてレーシック手術の効果も!?)。
そうなると、この日のように相手投手も〈簡単にストライクを取りにいくと持っていかれるんじゃないか〉と、感じるのだろう。その思いがピッチングを慎重にさせボール球を多くさせる。この日の2四球にそんな成長を感じながら見た。
清原の持つ勝負強さ
ここで5番清原の話題にも少し触れておく。
岡田の2つ目の四球でチャンスを広げた5回2死満塁の場面で、見事、右中間へ走者一掃のタイムリーツーベース。1000人弱のスタンドの期待に応えるバッティングで、清原はその日の主役になった。
この試合の打撃成績は、3打数1安打で前の2打席は連続三振。その中では今井の130キロ台後半のストレートにバットが合わず、真っすぐは4球すべて空振りだった。
これまでにも多くの修羅場で勝負強さを示してきた清原和博。故障からの復帰を目指す姿を間近で見て、岡田はどう感じたか? |
本人が「まだまだリハビリの一環。(1軍)どうこういうレベルじゃない」と言っている通り、ようやく7、8分の力で振れるところまで来たというのが現状だ。
試合前のフリーバッティングも目慣らし程度で、打席に立ってもフルスイングはせず、ほとんどが当てるだけ。まだまだ時間はかかりそうだ。
しかし、そんな中での第3打席。
この試合5回目となる空振りのあと、1-1からの外寄りの真っすぐに初めてバットが当たった。すると打球はセカンドの頭もフラッと超えて右中間をゴロで転々…。3人のランナーを全てホームに迎え入れた。決して痛烈な当たりではなかったが、こういうチャンスで結果を出すのが清原。この勝負強さは岡田も継いでいってほしい。
甘い球をひと振りで捉えよ!
話を戻して岡田の第4打席。ここでは左腕・広池からセンター前にヒットを放った。
この1本にも、先の四球の話にもつながる成長を感じた。
打ったのは2-2からの真ん中低めのスライダーか、少し抜いたボール。サウスポーのそんな決め球に、去年までの岡田なら態勢を崩して空振り三振となってもおかしくなかった。それが体を何とか残して最後は右手で拾ってセンター前へ落とす。こういうバッティングをされると、相手投手には「手強いな」という印象が残るだろうし、サーパスベンチの信頼感は徐々に増していくはずだ。
豪快な一発は見られなかったが、2つのフォアボールに渋い1本のヒットは、僕の気分を明るくしてくれるものだった。
確実に成長中。一塁側の記者席から試合を見ていたコリンズの目にもきっとそう映ったことだろう(?)。
これからは、いかにミスショットをなくすことができるか。相手が警戒してくるということは、当然、甘いボールがくる確率は減るということ。1打席の中で1球あるかないかの好球をいかに捉えるか。この日も、第2打席にセカンドゴロに倒れた真っすぐや、第4打席にもファウルにした甘いスライダーがあった。これらを捉える確率が上がれば、1軍もグッと近づいてくるはずだ。
岡田ファンのみなさん、爆発の日までもう少し、お待ち下さい!
左に清原、右に岡田。この姿をぜひ、オリックスのユニホーム姿で今年中に見てみたい |
★更新前日の11日、ヤフードームで行なわれたソフトバンク戦は3打数ノーヒットで3三振。最後は代打を送られていたが、ソフトバンクの投手リレーを見ると新垣→森福→ニコースキー→高橋秀。1軍さながらの顔ぶれで、まして新垣のスライダー、フォークは、初対決の岡田にとっては「とんでもないボール」に見えたはず。〈いいものを見た〉と思って、次に生かしてほしい。
■2008年ファーム成績(5月11日現在)
26試合 90打数24安打 2本塁打 12打点 15四死球 21三振 打率.267(打撃成績18位)
(取材・本文/谷上史朗)
このシリーズは毎月1日、11日、21日頃に更新しています。次回更新は5月21日の予定です。

「4番岡田、5番清原」と並んだこの日のサーパスのオーダー
岡田の成長の跡は、四球の数にも見られる。昨年までのもろさが減り、相手に与えるプレッシャーも増した
これまでにも多くの修羅場で勝負強さを示してきた清原和博。故障からの復帰を目指す姿を間近で見て、岡田はどう感じたか?
左に清原、右に岡田。この姿をぜひ、オリックスのユニホーム姿で今年中に見てみたい![白夜書房: 中学野球小僧 2008年 07月号 [雑誌]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/61%2BuecNNNVL._SL75_.jpg)
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