谷上史朗レポート ナニワのゴジラ奮闘記-第71回-
2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。今回は第71回です。連載が始まってから3度目の球春を迎えました。
大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団。2年目の昨年は、シーズン前半こそ不調だったものの、北京で開かれたオリンピックプレ大会での活躍を契機に後半復調しました。そして、期待がかかった3年目。しかし、序盤は振るわず、今季も開幕は2軍スタートとなりました。今後の巻き返しが期待されます。
そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でレポートいたします。今回はどんな内容になっているでしょうか?
ウエスタン・リーグ開幕
左手1本でディーバッティングをする岡田。ウエスタン教育リーグでは、終了直前に調子を上げてきた |
前回ここで「取材予定」と書いた3月19日の阪神との練習試合が雨で中止になった。
そこで今回は22日がウエスタン・リーグの開幕戦ということで更新日(通常21日)を遅らせてもらった(22、23日が土日のため24日更新)。
22日と言えば、ちょうど高校野球のセンバツ大会が開幕する日でもあったが、甲子園に背を向け、朝の新幹線で向かったのは名古屋。岡田にとって勝負の3年目は名古屋球場での中日戦から始まった。
球場に着くと、中日のバッティング練習の最中。終了後、間もなくサーパスの選手がグラウンドに登場した。
今年からファームのマネージャーとなる岸田光二、町豪将の両氏に挨拶をしているとベンチ裏の岡田とバッタリ顔を合わせた。
「調子は?」と尋ねると、いきなり「昨日の練習は全然でした」。
「“全然”じゃアカンやろ」と返すも、岡田の表情は明るい。教育リーグ後半の3試合では13打数5安打、実戦での今季初アーチも飛び出すなど、開幕を前に上り調子を感じさせていたことも関係しているのか。
そのあたりに話を向けると
「あのへんの感じは良かったですよ。長打も結構出てましたし」
と、ストレートな反応が返ってきた。
その後、スタンドで仕入れた情報によると、15日のソフトバンク戦では和田毅からもいいヒットを打っていたそうで、開幕前日の感触はともかく岡田流に言えば「感じは悪くない」ということか。最後に「スタートから勢い出していけよ」と声をかけると「はい」とグラウンドへ飛び出していった。
試合前の打撃練習も好調。だが、精度が上がればもっとスゴイ弾道となるはずだ |
突き刺さるような弾道を!
グラウンドでの岡田は、長田昌浩と組んでのティーバッティングを終えると、フリーバッティングに入った。昨年までのバッティング担当から守備走塁担当となった大島公一コーチの投げるボールを気持ち良さそうにポンポンとスタンドへ運んでいく。2つのゲージを使って行われたバッティングで、僕の勘定では2度の3連発に、1度は6連発もあった。
ただ、まだ本当に芯を食った当たりは少ない。フリーバッティングのボールなら持ち前のパワーで楽々スタンドまで運べるが、1軍の生きた140キロ、150キロを弾き返すには、パワー+理に叶ったフォームで、より強い打球を求めていかなければならない。
僕の頭にある理想は、松井秀喜(ヤンキース)が巨人の後半に見せていた〈東京ドームの天井を突き破ってしまうんじゃないか!?〉と思わせるような、あの強力な弾道。
岡田も本来ライナー性の伸びる打球に凄みを持つ。フリーバッティングの時からスタンドに突き刺さっていく打球を求めていってほしい。
初打席ヒットのスタートも…
ウエスタンリーグ開幕戦の中日戦では初打席でライト前ヒット。だが、この日の安打はこれだけだった |
試合は12時半に開始となり、岡田は6番ファーストで出場した。
中日の先発マウンドは吉見一起。27日から始まる1軍の試合に向けた先発テストを兼ねていたようだが、岡田にとっては一昨年のフレッシュオールスターで一発を放つなど、いいイメージを持った相手だ。スタートから乗っていきたい。
注目の第1打席は2回1死の場面。三塁側スタンドの最前列に備えたハンディビデオにスイッチを入れてから、バックネット裏へ回りカメラを構えた。すると、いきなり初球を打ちライト前ヒット。シャッターチャンスを逃したが、ワンバウンドで一、二塁間を抜けていく当たりで幸先のいいスタートを切った。
続く2打席目はストレートのフォアボール。
やはり、吉見に投げにくそうな雰囲気を感じた。しかし、6回の第3打席はカウント2-1から真ん中高めのストレートに空振りの三振。「アレッ」という感じでスイングのあと、キャッチャーミットに収まったボールを見つめる岡田だったが、ここからがいけなかった。
第4打席はサウスポー菊地正法の外のストレートに空振り三振。さらに延長10回。2死から5番・一輝のレフトへの決勝アーチが飛び出した直後の第5打席も、金剛弘樹の外のストレートに空振り三振。関東ではプロデビューとなった中田翔も3三振を喫したようだが、3年目のスタートとしては正直物足りない結果となった。
試合は延長戦ののち、サーパスが勝利。この日のスコアボードに表示されている「6番・岡田」がもっと左に移動していく日はいつか? |
気になったヘッドと下半身
この日の3つの三振はすべて振ってのものだったが、僕が見た限りいずれも最後の球はストレート。少しバットが下から出ているために、高めのストレートに空振りするか、ヘッドが負けて左方向へのファウルになる、という形が気になった。フリーバッティングの遅い球なら問題はないのだが…。
例えば、この試合の5回に代打で登場した吉良俊則が吉見の高めのストレートをパチーン! とセンター右へライナーで弾き返した当たりは、バットのヘッドが立ったままキレイに走っていた。岡田にもあの感じがほしい。
キャンプで話を聞いた時には、本人も「今はバットのヘッドを立ったまま振れるように意識してます」と話していた。簡単に身につくものでもないのかもしれないが、岡田のパワーでヘッドが立って走れば、それこそスタンドに「落ちる」ではなく「突き刺さる」打球がどんどん増えていくはずだ。
さらに言わせてもらえれば、今よりももっと下半身を使い切ったフォームをものにしたい。
足裏から吸収したパワーが、腿の内側を通り、股間節の乗せとねじれによって、最後にインパクトに集約されるスイング。一緒に自主トレを行ったイチローの体が、下からねじれあがるように振っていたあのスイングを思い出して欲しい。
とにかく「下から、下から」…。
上体の力があるがゆえに、まだ上手く体を使いきれていないところがある。このあたりがさらに変わっていけば、結果はおのずとついてくるはずだ。
試合後のダッシュのインターバルでも打撃を気にする岡田。母校の履正社高校も甲子園で初勝利を挙げた。先輩の岡田も早く爆発したいところだ |
試合はサーパスが2対1で延長戦を制し白星発進。しかし、心中穏やかではなかっただろう岡田は、試合後に行われた外野でのダッシュの合間にもバッティングの動作を繰り返していた。
そして、その練習が終わったところで僕は岡田より一足早く球場を出た。ベンチ裏で簡単な話を聞くことも可能だったと思うが、この日の結果を受けて、特に本人も何かを話す気分ではなかっただろう。やるしかないことも、結果を出すしかないことも、誰よりも本人がわかっているのだから。
というわけで、ひとまず今年も開幕。1軍で当たり前に見られる日が1日も早くやってくることを願いつつ、今年もまた岡田貴弘を追いかけていくつもりだ。
後日、甲子園にて
観戦の翌日、高校野球のセンバツ大会では岡田の母校・履正社高校が下関商業を延長の末、3対2で甲子園初勝利を飾った。
試合後、先制点が4番・山本優太のスクイズだったことに触れ質問をすると「これがウチの野球です。ウチの4番でバントをさせなかったのは過去に岡田だけです」と言って、岡田龍生監督はニヤッと笑った。
そんな勝利インタビューが行われている頃、開幕2戦目を戦っていた岡田は3打数ノーヒットと沈黙。犠牲フライにより今季初打点はあったようだが、ノーアウト満塁の場面での打席と知り、まだまだ物足りないと感じた。
早く、ゴジラの派手な大爆発が見たい。
■2008年ファーム成績(3月23日現在)
2試合 7打数1安打 1打点 1四球 3三振 打率.143
(取材・本文/谷上史朗)
このシリーズは毎月1日、11日、21日頃に更新しています。次回更新は4月1日の予定です。


試合前の
ウエスタンリーグ開幕戦の中日戦では初打席でライト前ヒット。だが、この日の安打はこれだけだった
試合は延長戦ののち、サーパスが勝利。この日のスコアボードに表示されている「6番・岡田」がもっと左に移動していく日はいつか?
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