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2008-02-08

イスラエル野球紀行 第16回

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 2007年6月に中東の地・イスラエルでプロ野球が始まったのをご存じでしょうか? 『野球小僧』では昨年9月10日に発売された07年10月号の「ワールドベースボールレポート」にて、シーズン中に現地へ赴いた石原豊一氏によるのレポートを紹介しました。
 ただし、ページ構成の都合で掲載は1ページ。そこで、石原氏が誌面に書ききれなかった道中の体験を「イスラエル野球紀行」としてご投稿いただきました。
 現在はそれをもとにして、当ブログにて週1回のペースで連載しております。今回は15回目。滞在も最終日となり、いよいよ終わりが見えてきました。
 我々日本人には、大変遠く感じる中東・イスラエル。開幕したプロリーグとは、実際どのような雰囲気だったのでしょうか?

イスラエル野球紀行の過去の記事はこちら

        
           

■ラストゲーム(8月14日 ベトシェメシュ・ブルーソックス対テルアビブ・ライトニング戦[テルアビブ・スポーテック])~その4

       
試合は5回へ突入

 試合は観客の興味も薄れはじめる5回に突入した。この回になって、突如としてブルーソックスの反撃が始まる。
 8番指名打者のアイヤーズが三振後、ラストバッターで、なんと今日ユニフォームを忘れてきたクレイマーがフォアボールを選んだのがきっかけだった。IBLではこういう無駄な四球からピッチャーが崩れる事が多いが、この試合もまさにこのパターンだった。
 テルアビブはリリーフ陣に問題があるらしく、昨日も序盤を楽勝のペースで進めながら、先発のプリブルが交替したとたん、投手が総崩れとなって試合を落としている。
 続くシーン・スローターのとき、ピッチャーの動作が不自然だったということで、攻撃側からボークではないか、という抗議が出た。確かに投球動作を一旦停止したように見えたが、審判はボークではないと言う。ここでは、選手のレベルに比例して、審判のレベルも決して高くない。見ていてあれっ、と思うことも多い。今回の判定もそのたぐいで、さすがに納得いかないのか、ブルーソックスのブロンバーグ監督がグラウンドに出てきて少しもめた。が、審判の判定は覆るはずもなくそのまま試合続行。その直後にシーンは三塁線にうまくバントを転がし、一塁セーフ。試合が大きく動きそうな予感だ。
 続く2番、首位打者のレイムンドの当たりは、ショート前にボテボテのゴロが転がる微妙なタイミングだったが、名手フランコの矢のような送球はレイムンドの足より一瞬早くファーストミットに収まった。このリーグでは彼の守備力は際立っている。
 ところが、弘法も筆の誤り、次の3番リーズのなんでもないゴロをフランコがはじき、ブルーソックスに2点が入った。それまでしらけムードだった場内の空気が大きく変わる。やる気のなかった一塁ベンチか、急に聞こえるようになった大きな掛け声につれらたのか、おしゃべりに興じていた観客の目が再びフィールドに注がれた。

        

Barman観客席で談笑する兼任コーチのパールマン。まさか、このあとマウンドに上がるとは…

追い上げムードのブルーソックスも3番手投手は…

 これでなんとなくブルーソックスに追い上げムードが出てきた。攻撃が終わると、ブルーソックスは3番手ピッチャーを投入。点を取った後だけに、好投手でリズムよく抑えてさらに追い上げ体制を整えたい。
 ところが、プレーオフの事も考えてこんな消化試合に「戦力」は投入できないのだろうか、リリーフのマウンドの立ったのは背の低い保太ったオッチャンだった。よく見れば、さっきまで試合そっちのけで、ネット裏の観客と椅子に座ってしゃべっていたコーチのパールマンである。このグランドの横を、何も知らない日本人旅行者が通れば、ああ草野球をしてるんだ、としか思わないだろう。彼の投じる球は予想に反することなく、まさに草野球並みのスピードでキャッチャーのミットへ向かっている。パスッ、というなんとも鈍い音をたてて投球練習は終わった。
 再びプレーボール。
 ところがこの40歳の元セミプロ選手だったと言うアメリカ人は、その遅い球を駆使して、これまでおもにリリーフとしてチーム最多の11試合に登板している。2勝2敗1セーブの防御率5.19となんとも微妙な成績だが、少し前までのチーム防御率が5.26だからチーム内では結構頼りになる存在なのだろう。実際見てみると、なかなかどうして最初のバッターにセンター前ヒットは許したものの、2回を無失点、たまにサイドスローから投げるなどバッターを幻惑して、三振も2つとって流れを引き寄せた。
 しかし5回も終わると、昨日と同じように辺りはもう暗くなってきた。両軍の首脳陣が出てきて審判と協議したが、なぜか試合続行。6回終了時にはもう無理だろうと思われたが、選手はやる気マンマンで、駆け足でフィールドに散らばってゆく。

         

しまりのないラストプレー

Lopezブルーソックスの4番ロペス。この日はヒットを放つなど活躍した

 結局試合は7回、最終回の表、ブルーソックスの攻撃に入った。ここでこれまで好投していたテルアビブ先発のコーフマンが突如乱れる。先頭からなんと3連続四球。塁が埋まる度に観客は大騒ぎ。テルアビブの応援ボードを持った子供と、ブルーソックスのボードを持ったファンが隣り合わせで声を張り上げている。
 これにはテルアビブ側もたまらず、ピッチャーを交替した。2番手はエトキン。全てリリーフ登板で4勝1セーブを挙げているリリーフエースだ。昨日の試合でも2番手投手がつるべ打ちにあった後、出てきて後続をピシャッと押さえている。期待通り彼はノーアウト満塁のピンチから強打者リーズを内野フライにしとめた。
 ところが、一度目覚めたブルーソックスの打線を止めるのは容易ではない。4番ロペスはこのチャンスにライト前ヒットで応えた。それにしてもこの暗い中、ボールが良く見えるもんだ。ランナーが2人還り1点差。なおもワンアウト一、三塁。それにしても追いついたらどうするのだろう。そろそろ陽は本当に暮れてしまう。
 ここでブルーソックス、ブロンバーク監督が動いた。ここにきて今さら本気で勝ちにきている。一塁走者ロペスに代走を送り、5番ブレノリッツになんと代打を送ってきた。投手のフェリシアーノ。まさに草野球の世界だ。
 この「草野球」の世界において、フェシリアーノの打撃力は練習などしなくても他を圧倒している。ここまで6打数3安打の打率5割。レギュラーで出ていれば間違いなくタイトルをとるだろう。彼のバットはボールを捉え、ライトに大きなフライを打ち上げた。犠牲フライで同点だ。それにしても本当にこの後どうするんだ?
 ところがやはりIBL、ここで信じられない事が起こる。一塁ランナーの代走カーディナルが久しぶりの出場に気合が入る過ぎたのか、すでに二塁ベースを蹴っていた。ベンチから悲鳴にも似た怒号が飛ぶ。
「Go back!」
 ライトから一塁へボールが送られてゲッツー。とんでもないボーンヘッドだ。そのうえ、三塁ランナーも全力疾走を怠り、第三アウト成立までにホームを踏んでいないと判断された。主審は一塁のプレーに気を取られ、ホームベースを確認していなかったようにも見えたが、タイミングは確かに微妙だった。
 ゲームセット。1点差でテルアビブの勝利となった。
 これにはブルーソックス側の腹が収まらず、ナイン達は主審に詰め寄った。陽は沈み、辺りはどんどん暗くなってゆく。なんだかへたなコントの幕引きみたいだ。
 審判の判定が覆るはずもなく。よくよく考えればブルーソックスにとってこの試合はそもそもどうでもよい消化試合。かくして70人の観衆と10人ほどのスタッフの前で繰り広げられた今年のイスラエルリーグを象徴するような試合は幕を閉じた。
 元メジャーリーガーのブロンバーグ監督はいくら消化ゲームとは言え、さすがにこの敗戦には怒り心頭のようで、いつもの外野フィールドでのミーティングの後、全選手に腹筋運動を命じていた。

      

<次週はいよいよ最終回です!>
        

■石原豊一(いしはら・とよかず)
1970年生まれ、大阪府出身。圧倒的な行動力で、これまでアジア、アメリカ、中南米、ヨーロッパなどを渡り歩く「流離いの野球好き」。すでに世界各国200を超える球場で野球を観戦してきた。イスラエル野球リーグが開幕すると聞いて、今回も早速現地へひとっ飛び。異国の野球熱を思い切り体感してきた。

※石原豊一氏による北信越BCリーグ開幕時のレポートはコチラ
http://kozo.boxerblog.com/kozo/2007/05/post_4ba1.html

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