2006年4月1日より始まったオリックス・バファローズ岡田貴弘選手レポート。今回で65回目を迎えております。
大阪・履正社高校時代、その風貌やスケールの大きな打撃がヤンキース松井秀喜選手を彷彿とさせることから、「ナニワのゴジラ」という異名がついた岡田選手。
2005年の高校生ドラフトで、オリックスに1巡目で指名されて入団。飛躍が期待された2年目は、シーズン前半こそ不調からファーム暮らしが続いたものの、北京で開かれたオリンピックプレ大会で活躍以降、帰国後も好調を維持したままオフに突入。3年目の今季が大変楽しみになってきました。
そんな「ナニワのゴジラ」が奮闘する姿を、高校生の頃から岡田選手を取材し続けてきたライター・谷上史朗氏の視線でレポートいたします。今回はどんな内容になっているでしょうか?
初自主トレ、イチロー&ゴジラ!
新聞報道を通じ目にした人も多いだろうが、1月17日にイチローと岡田、2人だけの自主トレが実現した。岡田本人には既にその2日前に連絡が取れていて、17日に取材へ行くことが決まっていた。ただ、その時点ではイチローと練習する予定は入ってはおらず、10時から2時間、他の若手らと行うはずだった。
ところが16日の夕方、「ちょっと時間が4時からに変更になって…」と電話が入った。そこで〈イチロー関係かも〉とピンときた。17日と言えば13年前に阪神淡路大震災が起きた日である。イチローはいつもこの日は神戸で練習をしているからだ。そこで、「イチローの関係?」と聞いてみると「はい、一緒にやることになって…」と言うことだった。
去年もイチローは何度も神戸で自主トレを行っていたが、岡田が一緒にやることはなく、特に熱心にイチローの練習を見たという話も聞かなかった。逆に〈イチローさんはイチローさんなんで…〉というニュアンスの言葉を聞いたことがあったほど。それが驚きの初タッグである。
どういう流れで実現したのかと言えば、イチローの練習パートナーを務めている元オリックスの藤本博史の都合がつかず、パートナーを探していたところ、オリックスの広報を通じ岡田に声がかかったのだった。
イチロー登場
イチローが練習場に登場。岡田が駆け寄り、まずは挨拶する |
当日は大半の選手が練習を終えたあとの午後4時から開始が予定されていた。球団寮の「青濤館」横にある室内練習場で待機していると、まず開始予定時刻の30分前に岡田が登場した。この時点で主役を待つ室内練習場中の空気はピリッと締まる。岡田の表情も少し緊張して見えた。
そして午後3時57分、スタッフ3人と共にイチローが登場。すかさず岡田が駆け寄り「岡田です、よろしくお願いします」と挨拶した。すると「無理やりじゃなかった? 大丈夫?」と明るい声のイチロー。そのまま2人はロッカールームで着替え、再登場は16時10分。いよいよ練習が始まった。
先に言ってしまうと、約2時間の練習中、岡田とイチローが言葉を交わしたのはほんとに数えるほどだった。
1度目はキャッチボールを始める時。
「俺は離れるから無理しないで。自分のペースで投げてくれたらいいから」と言ったイチローに岡田が「はい」。
2度目は、イチローの返球の強さに散々驚かされたあと。イチローの「このあとティーやってバッティングね」という声に、おそらく「わかりました」。
3度目はそのティーの合間に「打っていいよ」とイチロー…。ともかく、その程度の“会話”のみだった。
何より楽しみだった2人のフリーバッティングは、打撃投手の球を交代に打ち約1時間続いた。
出だしから芯で「カン」「カン」と捉えるイチローに対し、岡田のスタートは「ガキッ」「ボコッ」「グシャ」という感じが多かった。しかし、3回目あたりから岡田にも快音が響き出し、真後ろで見ていたイチローからも「オッ」「ホーッ」という声が何度か聞こえた。見応えのある、贅沢な競演を途中からは2人の真後ろからじっくり見せてもらった。
こうして約2時間のトレーニングは終了。その後、まず岡田が記者に囲まれた。
練習後、囲み取材に応じる岡田。イチローのバットの出方に関心を示した |
記者 どうでした?
岡田 なんていうか、言葉では言い表せないですね。
記者 どこが凄かった、と?
岡田 あのキャッチボールのボールが全然違いました。全然球が落ちないんです。あれがすごいですね。
記者 清原選手は(去年)イチローのボールを受けて手が真っ赤になったと言ってました。
岡田 僕は(グラブの)先で取って痛く無いようにしてたんで大丈夫でした(笑)。
谷上 気持ちも張って疲れたんじゃない?
岡田 あっという間でした。でも、2時間くらいでしたけど結構、アドレナリンが出てたと思います。
記者 イチローのバッティングを見て自分でも取り入れていきたいな、というような点は?
岡田 体の使い方が違いますし、バットの出方も全然違います。アベレージバッターでもパワーヒッターでも関係なく、やっぱりボールを捕える確率を高めないとダメだと思うんで、少しでも近づけていきたいと思います。(イチローは)最短距離でインサイドアウトに出てますよね。
記者 バッティング練習ではいい当たりも多かったと思うけど?
岡田 そうですね。マシン以外で打つのは今年初めてだったんですけど、予想以上にましな打球がありました。
記者 今年はどんなシーズンに?
岡田 去年もオープン戦までは上に帯同させてもらったんですけど、そこまでで…。今年はオープン戦でも結果にこだわって、必死にくらいついていきたいです。
谷上 イチローも高卒3年目210本安打。今年は岡田もその3年目。
岡田 そういう意味でも勝負の年になると思います。
記者 オリックスはこのオフにいろいろ補強をしたけど?
岡田 カブレラがケガをすることだってあると思うし、いつでも出れるように準備しておきたいと思います。
気になるイチローの岡田評
岡田の打撃を後ろで見つめるイチロー。帰り際の囲み取材で「ペタジーニみたい」と評した |
岡田の取材が終わってしばらく、着替えを終えて出てきたイチローは足早に出口に向かうと、そのまま表の駐車場へ。そのまま車に乗り込むのか…、と思いきや、そこでストップ。3分足らずの短い時間だったか囲み取材が始まった。
気になるその内容は…。
記者 岡田選手についての印象は?。
イチロー ペタジー二(元ヤクルトほか)、ペタジー二みたい。
記者 岡田選手は将来の4番候補と期待されて、パワーがあるバッターです。
イチロー それは見てすぐにわかった。でも、(打撃投手相手に打つのは)今日が初めてっていうのにすぐに対応していってたからセンスもあるよね。
谷上 岡田はイチローさんのバットの出方に一番関心をしていましたが、イチローさんから見て、岡田のバッティングがどう見えたのか、気になる点などありましたか?
イチロー それはわかんないよ。だって見たのは今日が始めてだから。だけど2時間でも一緒にやるとやっぱり情もわくし、頑張ってほしいよね。
記者 オリックスの若手とまたやってみようという思いはありますか?
イチロー こっちからお願いします、ですよ(笑)
このあとももう少しあったが、ザッとこんな言葉を残しイチローは迎えの車へ乗り込み、足早に去っていった。イチローの岡田を語る言葉からは“好意”を感じたが、練習中の2人の間には距離があった。岡田がイチローに積極的に近づくことはなく、記者から「次も機会があったらパートナーに立候補したい?」と聞かれ時は「勘弁して下さい」と冗談っぽく返していた。そんな反応も含め、岡田らしいと言えば岡田らしいと見ていたが、その後、展開があった。
イチローの指摘に気になったのは…
この日以後も、岡田はイチローと練習。貴重な日が続いた |
実はこの翌日からもイチローと岡田は一緒に練習することになり、新聞ではいきなり「塾生」なんて書かれていた。その3回目の20日、フリー打撃の合間に岡田がついにイチローへアドバイスを求めに行ったと言う。デイリースポーツの記事をまとめるとこんな感じだ。
「僕のバッティングの悪いところは…」と意を決して近づいた岡田に対しイチローは「悪いところは誰にでもある」と前置きした上でこう言ったそうだ。
「一番悪いのは打ちに行く時に左肩が前に突っ込むところ。下と上のバランスがバラバラになっている。それがない時はいいスイングだよ」
左バッター岡田の左肩が突っ込むとは、開きが早くなり、バットも外回りするという指摘だろう。岡田がイチローに関心していたインサイドアウトの軌道も左肩が先行しては無理なスイング。事実、イチローと交互に打っていた岡田のスイングを真後ろから見ていると、イチローのように内から絞り込んでいくような形は感じなかった。
この左肩の突っ込み、早い開きについてひとつ思ったのが前回書いた目のことだ。その時にも登場してもらった田村智則先生から聞いた話を思い出した。「例えば、左バッターで左目でボールを見よう、見ようとする意識が強いと、顔が回りやすく、それが体の開きにつながることがある。体をいくら開かないようにしようと頭で思っても、見ようと思えば思うほど、顔は正面を向きやすくなる」という話だ。
イチローは岡田のスイングが時折左肩が突っ込むことを指摘。3年目の台頭に向け、大いなるきっかけとなってほしい |
これには効き目がどっちかという問題や、右と左の視力のバランス、あるいは個人による目の使い方の特徴も大いに関係してくる。例えば、現役時代の落合博満(中日監督)に代表されるように、足の置き方をオープンにし、構えた時から顔を投手へ向けておくのは、両目でボールを見ようとする意識の高いバッター心理と関係するのかもしれない。
技術そのものの問題もあるだろうが、目の機能がこれまでの岡田のバッティングフォームに少しでも関係していたとすれば…。今度のレーシック手術(近視矯正)によって、これまで身についてしまっていた悪癖が出にくくなるなるかもしれない。改めて一度、本人に目の話をじっくり聞いてみたい。
また、もうひとつ。今回のイチローとの自主トレで僕が感じ、岡田に見習ってほしい点も書いてお