イスラエル野球紀行 第14回
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2007年6月に中東の地・イスラエルでプロ野球が始まったのをご存じでしょうか? 『野球小僧』では昨年9月10日に発売された07年10月号の「ワールドベースボールレポート」にて、シーズン中に現地へ赴いた石原豊一氏によるのレポートを紹介しました。
ただし、ページ構成の都合で掲載は1ページ。そこで、石原氏が誌面に書ききれなかった道中の体験を「イスラエル野球紀行」としてご投稿いただきました。
現在はそれをもとにして、当ブログにて週1回のペースで連載しております。今回は14回目。滞在も最終日となり、いよいよ終わりが見えてきました。
我々日本人には、大変遠く感じる中東・イスラエル。開幕したプロリーグとは、実際どのような雰囲気だったのでしょうか?
イスラエル野球紀行の過去の記事は→こちら
■ラストゲーム(8月14日 ベトシェメシュ・ブルーソックス対テルアビブ・ライトニング戦[テルアビブ・スポーテック])~その2
試合開始
いよいよ試合が始まった。
なぜか、先攻のブルーソックスの選手は、ラナーナのヘルメットをかぶっている。大方間違えたのだろう。まったくもっていい加減だ。守りについたときには、セカンドのクレイマーは、イスラエル人ルーキーのレイクマンの背番号2をつけて守っていた。後で聞くとやっぱり両方うっかり間違えたり忘れたりしたものだった。まったく、これでは草野球と同じではないか。いや、僕がやっている草野球は大会なんかになると、ユニフォームの着方から、サングラスや今はやりの色靴下の禁止などいろいろうるさい。ユニフォームの下は皆思い思いのTシャツを着ているこのリーグの方がよほどおおらかだ。
先頭バッターは先週登場したシーンだ。
初球をたたいてセンターに鋭い打球を打ったが、あいにくセンターの守備範囲だった。初回のブルーソックスの攻撃は3番のホームラン王・ジェイソン・リーズの内野安打があったものの、無得点に終わった。ブルーソックスも個人記録がかかっている、スターティングメンバーを見る限りは本気モードだ。
ただし、それは攻撃陣だけで、先発投手を見るとこの試合がブルーソックスにとって捨て試合であることがすぐにわかった。
先発ピッチャーは46歳
この日ブルーソックスの先発は今年46歳となるガードナーだった |
マウンドに立ったのはアラン・ガードナー、46歳(本人はまだ誕生日ではないので45だと胸をはるが)、大リーグのフリオ・フランコに次ぐ高齢の現役プロ野球選手だ。ただし、こちらはいかにも中年のおじさんっぽく、少し丸まったその背中は年齢以上に年を感じさせる。
後ろの観客に「このピッチャー、46歳だよ」と教えてあげると、目を丸くしていた。
彼を最初に見たのは、宿舎でリョージュの部屋がわからなくなり彼の部屋に飛び込んでしまったときのことだ。リョージュから監督・コーチ陣はホテル住まいだと聞いていたので、あとでコーチもいるじゃないかというと、あれは選手だといわれたので驚いた。
また別のとき、選手に混じって素振りをしていると、僕の草野球仕込みのスイングを見た選手が、僕に「ここでできるじゃないか」と僕にIBL入りを勧めてきた。僕が「もう年を取りすぎているよ」というと、その選手は「大丈夫、やつなんか46だぜ」とガードナーの年を教えてくれたので、僕はあらためて驚いた。
その彼の投げる球だが、はっきり言って草野球だ。ことごとくキャッキャー前でおじぎしている。草野球で対戦するなら40代半ばのわりにはいい球投げるなという感じもするだろうが、ここは曲がりなりにもプロである。こんなんで大丈夫なのか? と思って成績をみたら、なんと、これまで1イニングを投げて無難に抑えていた。しかも、元々外野手登録の彼は打席にも15回立ってヒットも3本打っている。打たれたピッチャーはさぞショックだったろう。まあ、フェリシアーノのような140キロ代後半のストレートを見せられたあとにこのピッチャーじゃあ、タイミングも取りにくいだろうと思って見ていたら。荒れ球が功を奏してか、初回は無難に抑えた。ただしフォアボールの後、簡単に盗塁を許してしまう様は草野球そのものだった。
初回は何とか抑えたものの、ガードナーは2回にあっさりくずれた。それも遅い球をつるべ打ちされるならまだしも、先頭から3連続でフォアボール。それもワンバンあり、高めのクソボールありと、これでは僕の入っている草野球チームでも点が取れる。
おまけに、このオヤジさんはホームベースを避けるようにミットにおさまる自分の球を棚に上げて、判定の度に審判に不満の表情を見せている。「Why?」と言っても、ネット裏から見ても、彼の沈むボールはことごとくストライクゾーンをよけてミットに収まっていた。
プロフェッショナルな草野球・IBL
熱くなる彼をなだめるため、ホルツ兼任コーチがマウンドへ駆け寄る。
チームメイトもさぞかししらけているだろうと思って観ていると、主砲の一塁手、ロペスがマウンドに行ってガードナーを励ました。その直後、ノーアウト満塁で難しいハーフバウンドのゴロがファーストに転がった。ロペスは勢いよく前に出てミットにボールを収めて体勢を崩しながらもホームに送球。ゲッツーとはいかなかったが、これぞプロというゴロさばきだ。
ここで、リュージュの言葉を思い出した。
「このリーグのいいところは、うまいやつがヘタな奴をカバーしながら、チーム全体でプレーするところですよ」
そのときは、それじゃまるで草野球や高校野球と同じじゃないかと思って聞いていたが、どんな状況でもチームの弱点を主力が補って勝利を目指す。それもまたプロフェッショナルなのだ。そういう意味ではこのキューバ系アメリカンのロペスは真のプロといっていい。
“プロフェッショナルな草野球”それがIBLなのだ。
ロペスはゴロを処理すると、再びガードナーのもとへ。一体どんな会話をしているのだろう。しかし、そんなロペスの努力もむなしく、次打者ストライクを2つ立て続けにとって持ち直したかに見えたガードナーのスローボールは、その直後高めに大きくはずれ、ワンバンし、ラストバッターのラングロードの打ち気を誘うことなく押し出しとなった。
まだ投げるのかと思ってベンチを見たが、交代の様子はない。ブルーソックスにしてみれば、今日のゲームなどどうでもよく、できるだけプレーオフに投げるような主力投手は使いたくない。そんな首脳陣の思惑を知ってか知らずか、ガードナーはマウンド上で荒れ狂っている。
テルアビブの打順は1番・ハスティングスに戻る。彼の一塁線を抜こうかという当たりをロペスがなんとかさばいたが、ホームは間に合わず、これで2点目。それでも何とかツーアウトにこぎつけた。
しかし一塁が空いたと思ったらまたもやフォアボール、この回5つめだ。草野球だってこんなピッチャーなかなかいない。
このピンチを今度はキャッチャーが救った。アメリカで3Aの経験もある3番フランコの打順のとき、ファーストへ矢のような牽制球を投げて一塁走者を見事に刺した。これでスリーアウトチェンジとなった。
<次週へ続く>
■石原豊一(いしはら・とよかず)
1970年生まれ、大阪府出身。圧倒的な行動力で、これまでアジア、アメリカ、中南米、ヨーロッパなどを渡り歩く「流離いの野球好き」。すでに世界各国200を超える球場で野球を観戦してきた。イスラエル野球リーグが開幕すると聞いて、今回も早速現地へひとっ飛び。異国の野球熱を思い切り体感してきた。
※石原豊一氏による北信越BCリーグ開幕時のレポートはコチラ
→http://kozo.boxerblog.com/kozo/2007/05/post_4ba1.html


この日ブルーソックスの先発は今年46歳となるガードナーだった![白夜書房: 中学野球小僧 2008年 07月号 [雑誌]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/61%2BuecNNNVL._SL75_.jpg)
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