イスラエル野球紀行 第9回
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2007年6月に中東の地・イスラエルでプロ野球が始まったのをご存じでしょうか? 『野球小僧』では9月10日に発売された10月号の「ワールドベースボールレポート」にて、シーズン中に現地へ赴いた石原豊一氏によるのレポートを紹介しました。
ただし、ページ構成の都合で掲載は1ページ。そこで、石原氏が誌面に書ききれなかった道中の体験を「イスラエル野球紀行」としてご投稿いただきました。
今後、当ブログにて週1回のペースで連載していきます。今回はその9回目です。我々日本人には、大変遠く感じる中東・イスラエル。開幕したプロリーグとは、実際どのような雰囲気だったのでしょうか?
イスラエル野球紀行の過去の記事は→こちら
■最後の夜(8月13日ネタニア・タイガース対テルアビブ・ライトニング(スポーテック))~その1
バーベキュー
この日は、試合後にバーベキューパーティーがある。まだこの日を含めてレギュラーシーズンは3試合残しているのだが、タイガースは一堂の慰労を兼ねてビーチでバーベキューパーティーをやるのだそうだ。後で聞くと、この夜は他のチームも同じように慰労会をやったらしい。
2ヶ月という短いシーズンだが、男所帯での寮暮らし。それも文化的背景も違う様々なところから選手が集まってくるということで、リーグでは選手相互の交流を深めるため、さまざまな企画を催してきた。これまでもエルサレムやソロモン王の遺跡を巡るツアーというか遠足を組んだりしている。リュージュの話だと、大男達がランチボックス片手にぞろぞろと歩くさまは、こっけいでほほえましくもあったらしい。
このバーベキューに僕も招待された。
テルアビブ・スポーテック
試合は、テルアビブのスポーテック(sportek)で行われた。
この球場はIBLの開幕に合わせて、市街の北にあるハヤルコン・パークという広大な公園の一角のスポーツ施設内に造られた。川の岸辺に広がる一面の芝生の原っぱにサッカー場や陸上競技場が並ぶ一番奥、海側にある草野球場がそれだ。
もちろん観客席などはなく、外野フェンスもラバーなどは貼っていない。タダ見防止の為なのか、青いシートだけが張り巡らされている。内野フィールドのフェンスをさらに囲む形でフェンスがあり、この中に入るためにはチケットが必要となっていた。
ネット裏に50席ほどプラスチックの椅子が置いてあり、観客はここに座って観戦するか、ベース際のフェンス近くで立ち見、あるいは一塁側のフェンスと外郭のフェンスの間の原っぱでボール遊びするかして野球を楽しむ。
「開幕に合わせて…」と書いたが、実のところこの球場の完成は開幕には間に合わず、数試合がキャンセルになった。そのせいで、シーズン終盤にダブルヘッダーが組まれることになり、各チームのホームグランドもなし崩しになってしまった。おまけに、その試合中止の告知がちゃんとされず、せっかく球場に来たのに試合がなかった…などということもあったそうだ。
誰も知らぬ球場の場所
テルアビブのスポーテック。スタンドというより草野球グランドというイメージだ |
僕は近くの大学駅から歩いて球場へ向かった。だが、いかんせん誰も球場の場所を知らない。サッカーやラグビーのグランドが近くにあるところだと言うと、何人かが首をかしげながら方向だけを示してくれた。芝の続く運動公園へ入ると、一番奥にそれらしいものがあり、かすかに場内アナウンスが聞こえてきた。
試合はすでに1回裏のタイガースの攻撃に入っていた。ネット裏を中心に並べられた椅子には100人足らずの観客が座っている。それにしても、平日の午後4時開始の試合に足を運ぶこの人たちは一体何をしているのだろう。
後でわかったことだが、イスラエルでは夏場は早く仕事を切り上げる職場が多いそうだ。それでもすべてのオフィスが午後2時に終わってしまうようなことはないはずだ。現実に僕は夕方や夜にも買い物をしているのだから、多くの人が遅くまで働いていることは間違いない。
安息日にあたる休日はゲ
ームをせず、まだ仕事が終わるような時間でもない午後4時のゲーム開始など、興行面でのIBLのマネージメントにはまだまだ課題が多い。結局この日の観客は78人だった。この数字はこの球場では決して珍しいものではないそうだ。
試合が動いたのは3回表、テルアビブが一挙5点を入れた。もちろん例のごとくエラーがらみである。この試合でもタイガースは3失策もしでかしている。
しかも、記録上は失策とならない失策もある。打った瞬間、凡フライに見える打球が簡単にポテンヒットになってしまっていた。外野手の打球判断とスタートが悪いのだ。勢いに乗ったテルアビブは3回以後も、4回、5回に1点ずつ追加した。
これに対して元気のないタイガースは4回裏に1点を返すのがやっとの状態。エラーや残塁の続出するダラダラした試合はやたらと時間だけを食い、5回表の攻撃が終わって「Take me out to ball game.」が流れる頃にはもう辺りは暗くなっていた。ちなみにこの球場には照明はない。
予期せぬ投手交代
4回表を終わって6対0でテルアビブのリード。普通なら楽勝ペースだ。おまけにテルアビブのピッチャーはエース、アーロン・プリブル。彼があと、4回抑えれば試合は事もなく終わっていたことだろう。いや、日没のことを考えると、あと2回も投げれば十分だったはずだ。
しかし、なぜかテルアビブは、このエースピッチャを代えてしまう。3回を投げて2安打6奪三振。このレギュラーシーズンの最終登板で彼の防御率は1.94となっている。監督の頭の中は、数日後に始まるプレーオフに向いているようだった。下位チーム相手の楽勝試合にエースの続投はもったいない。
しかし、2番手のクラブは代わった直後に1点を取られてしまう。野球というスポーツは、ちょっとしたことから試合の流れが大きく変わるものだが、この日の試合はまさにこの投手交代から、急速に流れがタイガースに向かい出していた。
<次週へ続く>
■石原豊一(いしはら・とよかず)
1970年生まれ、大阪府出身。圧倒的な行動力で、これまでアジア、アメリカ、中南米、ヨーロッパなどを渡り歩く「流離いの野球好き」。すでに世界各国200を超える球場で野球を観戦してきた。イスラエル野球リーグが開幕すると聞いて、今回も早速現地へひとっ飛び。異国の野球熱を思い切り体感してきた。
※石原豊一氏による北信越BCリーグ開幕時のレポートはコチラ
→http://kozo.boxerblog.com/kozo/2007/05/post_4ba1.html


テルアビブのスポーテック。スタンドというより草野球グランドというイメージだ![白夜書房: 中学野球小僧 2008年 07月号 [雑誌]](http://ecx.images-amazon.com/images/I/61%2BuecNNNVL._SL75_.jpg)
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