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2007-12-24

イスラエル野球紀行 第11回

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 2007年6月に中東の地・イスラエルでプロ野球が始まったのをご存じでしょうか? 『野球小僧』では9月10日に発売された10月号の「ワールドベースボールレポート」にて、シーズン中に現地へ赴いた石原豊一氏によるのレポートを紹介しました。
 ただし、ページ構成の都合で掲載は1ページ。そこで、石原氏が誌面に書ききれなかった道中の体験を「イスラエル野球紀行」としてご投稿いただきました。
 今後、当ブログにて週1回のペースで連載していきます。今回はその11回目。我々日本人には、大変遠く感じる中東・イスラエル。開幕したプロリーグとは、実際どのような雰囲気だったのでしょうか?

イスラエル野球紀行の過去の記事はこちら
           

■最後の夜(8月13日ネタニア・タイガース対テルアビブ・ライトニング(スポーテック))~その3

会場のビーチへ

  Tシャツと短パンの集金の後、いよいよ出発することになった。僕とリョージュは、バラン監督の車に乗ることになった。
 彼は元々アメリカで弁護士をしていたという。IBLの発起人の1人が同じく弁護士という関係で、このリーグには法曹関係者が多い。その後、「故国」イスラエルに移住し、去年までパレスチナで警官をしていたという。
 そんな話を聞いて、僕は先日訪ねたパレスチナ自治区、ベツレヘムやヘブロンの風景を思い出した。この人もあの分離壁の周りで銃を片手に、アラブ人たちににらみを効かせていたのだろうか。

 バーベキュー会場は、テルアビブ郊外のビーチだった。
 夜だというのに海水浴を楽しむ人々でいっぱいである。すでに何人かの選手は到着していて、芝生の上にビニールシートを敷き、メンバーの到着を待っていた。何人かの選手はイスラエル人選手の実家によって準備をしたり、くつろいだりしていたらしい。我々の出発を携帯電話で聞いてから出発したので、待ちぼうけということはなかったようだ。
 さらに、当初は参加しないと言っていたラティーノたちも、彼らが車で迎えに行っていたそうで、結局は参加することになった。ともかくもメンバー全員集合となったのでよかった。ダンは奥さんと生まれたての子供も連れてきている。
           

国内選手と外国人選手

 ラファエルとサントス、「イカリヤ」・ゲレーロのラティーノ三人衆が到着すると、早速乾杯となった。つまみはイスラエル風のパン、ピタとナスのペースト、タヒーナそれにオリーブ。アラブ料理でも見かけるおなじみのメニューだ。現在では対立している両民族だが、こういう食べものひとつとっても、もともとはたいした違いなどないことがよくわかる。
 肝心のバーベキューは、イスラエル人選手たちが火をおこして準備してくれていた。彼らは試合後、肉や野菜を串に刺して用意してくれていたのだ。僕も手伝おうかと思って申し出たが、「それは不要だ。楽しんでくれ。」と取り合わない。
 リュージュの話だと、彼らの中には、チームの多数を占める外国人選手を迎えるホスト役のような意識があるらしい。普段はその外国人選手のために試合には出られない彼らだが、外国人選手なしにはここでの「プロ野球」などとても成立しないし、彼らにとっては、マイナーリーガーであってもプロ経験のある選手は、ある種の憧れの存在なのだろう。国際政治的事情から、孤立しがちなこの国の国民にとって、自国の野球リーグのためにはるばるやってきてくれた選手たちは、感謝し、歓待すべき存在なのかもしれない。
 大敗になりかけた試合を追いついての引き分けということもあってか、選手たちは皆上機嫌でパーティーを楽しんでいる。あともう少しでシーズンが終わるということもあるだろう。
 たった2ヶ月だが、プロというには余りにもお粗末な環境にプライバシーのない合宿生活ということもあって、イスラエルでの始めてのシーズンは選手たちにとって決して短かいものではなかったはずである。
              

チョースケ・イカリヤ?

 ところで、こういう場でも出身地別のすみわけができていた。
 ラティーノ3人衆はビーチと芝生を隔てる防波堤あたりで缶ビール片手に話している。ビニールシートには、米加豪の「グリンゴ」たちが陣取り、イスラエル人たちはかいがいしく、肉を焼いている。
 そして、リョージュはその間をうろうろ。彼の話だといつもこんな感じで、英語のあまり得意でない彼は、どのメンバーとも当たり障りのない付き合いをしているが、実のところ結構孤独でもあるという。フラリとやってきた僕にあれこれ便宜を図ってくれたり、このパーティーに招待してくれたのも、そのへんの事情があるのかもしれない。
 といっても、お互いのグループは仲が悪いというわけではなく、気遣いのあるラファエルが肉の焼け具合を見に行ったり、白人のコミターがラティーノのもとに行って話したり、お互いがシーズンの健闘をたたえ合っていた。
 僕たち日本人2人組みもあっちこっちへ行っては、いろんな選手と話をした。ゲレーロに、「お前は日本の有名なアクター、イカリヤに似ている。」と言って、「イカリヤ」を連発すると、この肩が痛いとシーズンの半分ぐらいをサボった能天気者は、喜んで自分を指差して「イカリヤ」と言って大笑いしていた。レッドソックスから契約金をふんだくった彼は、ドミニカに3軒も家があるという。

「ドミニカに来ることがあれば、連絡しろ。いつでも泊めてやる」

 と、気のいい事を言ってくれた彼は、結局連絡先は教えてくれなかった。3軒ある家も、本当のところは兄の大リーガー、ウラジミールが建てたものかもしれない。

              

<次週へ続く>
        

■石原豊一(いしはら・とよかず)
1970年生まれ、大阪府出身。圧倒的な行動力で、これまでアジア、アメリカ、中南米、ヨーロッパなどを渡り歩く「流離いの野球好き」。すでに世界各国200を超える球場で野球を観戦してきた。イスラエル野球リーグが開幕すると聞いて、今回も早速現地へひとっ飛び。異国の野球熱を思い切り体感してきた。

※石原豊一氏による北信越BCリーグ開幕時のレポートはコチラ
http://kozo.boxerblog.com/kozo/2007/05/post_4ba1.html

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